季節に映ることば
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関東風か関西風か

渡部 忍

2月17日現在、関東では暖かい日が続いています。
が、また寒くなりそうな予報です。
関東でも、かつて4月に雪が降ったこともありますので、雪の可能性もまだ残っていますね。
大雪の地域があったり、最近の天候はなかなか難しいと感じます。

もうすぐ花の節句です。
お店でも、桜餅を見かけるようになりました。
私も大好物の桜餅、ご存じの通り、関東風と関西風がありますね。

関東風は、小麦粉を水で溶いてクレープ風に焼いた皮のもの。
それで餡を包みます。
関西風は、道明寺粉で餡を包んだもの。
どちらも美味しいですが、みなさまのお好みはどちらでしょうか。
私はどちらも好きなのですが、強いて言えば関西風が好みです。

櫻餅うちかさなりてふくよかに 日野草城

さくら餅食ふやみやこのぬくき雨 飯田蛇笏

三つ食へば葉三片や櫻餅 高浜虚子

関東風の桜餅は「長命寺」。
関西風は「道明寺」。

それぞれ「長命寺」「道明寺」というお寺に因んだ名前なのだそうです。

花の香を若葉にこめてかぐはしき櫻の餅家づとにせよ 正岡子規

長命寺桜餅の発祥は、「長命寺桜もち」創業者が享保二年(1717年)に土手の桜の葉を樽の中に塩漬けにして桜もちを考案、向島の長命寺の門前で売り始めたことが始まりなのだそうです。
(「長命寺桜もち」は登録商標とのことです)

向じま花さくころに来る人のひまなく物を思いける哉 正岡子規

一方、道明寺粉は、大阪は藤井寺市にある「道明寺」が由来。
平安時代に道明寺で作られた保存食「干飯」が元なのだとか。
干飯は、戦国時代には戦場の保存食として重宝され、江戸時代には和菓子作りにも使われるようになったそうです。

葉のぬれてゐるいとしさや桜餅 久保田万太郎

桜餅闇のかなたの河明り 石田波郷

道明寺粉の桜餅には、京都の嵐山に餡なしのものもあるそうです。
食べてみたいですね。

一言で「桜餅」と言いましても、お店の個性が出ていたり、そんなところにも意識を向けて食べ比べてみるのも楽しそうです。
見て楽しく、食べて美味しい桜餅、みなさまも楽しく美味しい春をお過ごしくださいませ。

2025年2月17日
     
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