季節に映ることば
季節に映ることば

笑う仏さまを探せ

渡部 忍

「今日は寒いね」
「今日は暖かいね」
と挨拶変わりに話しているうちに、暦は2月となりました。
梅のつぼみが膨らんできたり、自然は着実に春に向かって準備を進めているようです。

2月の日本の行事と言えば・・・
2月15日の「涅槃会」がありますね。
お釈迦様が亡くなられた日とされていて、お寺では法要が行われます。
歴史は古く、奈良時代からなのだそう。

こゝろゆく極彩色や涅槃像 炭太祇

涅槃会や皺手合る珠数の音 松尾芭蕉

小うるさい花が咲とて寝釈迦哉 小林一茶

花のところへ雪のふる涅槃哉 小林一茶

紺青の空に月あり涅槃像 高浜虚子

涅槃会をまかりて来れば雪つめる山の彼方に夕焼のすも 斎藤茂吉

平安時代以降、涅槃会の法要では涅槃図を本尊とすることが定着。
今は一般公開するお寺も多くあるようです。
涅槃図とは、お釈迦様の入滅のご様子を描かれた絵のこと。
沙羅双樹の木の下で横たわっているお釈迦様の周りには、菩薩様たちやお弟子さんたち、動物たちが集まって嘆き悲しんでいる様が描かれています。

ふと私が気になった一句。

涅槃像仏一人は笑ひけり 正岡子規

その中に笑っている仏さまが一人いるのですね。
一昔前に「ウォーリーを探せ」という本やグッズが流行った時がありましたが、
現物の涅槃図や五百羅漢様の中から笑っている仏様を探したくなりますね。

そして、涅槃会といえば、甘茶でしょうか。
お釈迦様の尊像にかけられるお茶で、お釈迦様への信仰を表すものです。
お釈迦様がお生まれになったお祝いで、天から甘い雨が降ったことに由来しているのだとか。
我が家の子ども達がお世話になった保育園は仏教園でしたので、涅槃会の行事もおこなわれていました。
その日は園庭にお花に囲まれた花御堂とお釈迦様の誕生仏が置かれ、子ども達は自由に甘茶をかけることができたように記憶しています。
一家庭に一袋ですが、甘茶のティーパックも配られました。
初めて飲んでみた時は、とても甘くて驚いたのを覚えています。

雀子がざくざく浴る甘茶哉 小林一茶

山寺や花さく竹に甘茶仏 飯田蛇笏

白毫の甘茶にぬれし灯影かな 会津八一

話題は変わりまして・・・
現在では、ゾロ目の日に「○○の日」と記念日とされているのをよく見聞きします。
2月22日は?
なんと「2(にゃん)・2(にゃん)・2(にゃん)」で「猫の日」なんだそうです。

里の子の猫加へけり涅槃像 夏目漱石

なの花も猫の通ひぢ吹とぢよ 小林一茶

まだしばらく猫と一緒に炬燵で温まりたい寒さが続きそうですね。
みなさまにおかれましても、お風邪など召しませんようご自愛くださいませ。

     
バックナンバー
季節に映ることば
天来書院ブログ一覧
天来書院
ページトップへ