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たくさんのチョウの季節が来た。遅咲きのクサキョウチクトウの香りの中でチョウは緩やかに踊り酔っている。チョウは聲もなく青い空の中から浮かんで来る。ヒオドシチョウ、アゲハチョウ、ヒョウモンチョウ、臆病なアキツバメ蛾、赤燈蛾、キベリタテハチョウ、ヒメタテハチョウ、ビロウドと毛皮でふちどられた色も豪華に宝石のようにきらめきながら浮かんで来る。きらびやかに悲しげに、黙々と酔いしれて滅んだおとぎ話の世界からやってくる。(ヘッセ 晩夏の蝶)
第11回日書展(1958)
太陽の炎が周りで森の薫香を焚き始めたのにお前は未だ悲しみに沈んでゐるのか、蝶よ――
あまりに軽いその羽が、氷の露に縛られてせっぱ詰まった弱さの気持ちに酔ひよろめいて、いっそ破滅に打ち負ける気になってゐるのか。
おお、眼を覚ませ、そして耐へよ!
お前を救ふ日の光は、早や身の近くに燃えてゐる!もうひと息だ
さうすればお前の翅( はね) の絹のやうな粉が乾くのだ、そしてまだ死に噛まれたことのない他(ほか) の生きものよりも深く熱を身内に感じつつお前は高く舞ひ立ったのだ――お前の魂を成就させる光の中へ。(カロッサ 太陽の炎が)