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文/写真 松倉大輔

第六回 『蘇州をゆく』
思無邪・公主明碑 〔蘇州碑刻博物館〕

 小泉純一郎氏は2001年の金大中大統領との首脳会談の際、韓国国内の訪問先にて『思無邪(おもいよこしまなし)』と記帳した。五経のひとつ「詩経-魯頌」からくる言葉である。この中国最古の詩集は孔子の編とも言われ、その言葉が詩経の云わんとすることを最も良く表現していると弟子達に教えたという。
  右の碑は宋代の歴史家、儒学家として知られる「司馬光(1019-1089)」の“八分書”である。(孔子が儒教を説いた1500年後のもの)所在地は蘇州文廟(孔子廟)。南宋淳祐元年(1241年)の立碑で高さ239㎝×巾96㎝である。ん?どこかで見たぞ!と思われる方も多いと思う。そう、欧陽脩など歴代文化人の筆による碑刻が全国各地に置かれているのだ。有名な言葉なんだね。


清代工商経済碑刻碑廊 〔蘇州碑刻博物館〕
 その蘇州文廟(宋景祐年間創建)は蘇州碑刻博物館としての顔ももっている。一般開放されたのは1985年。儒学に関する歴代の碑刻や、蘇州経済関連の碑、孔廟の重修記碑などが碑楼や碑房に収められている。目玉とされる「四大宋碑館」に置かれている碑は『平江図碑(1229年)』、『天文図碑(1247年)』、『地理図碑(1247年)』、『帝王紹運図碑(1247年)』であり、刻図と刻字が鑑賞できる。

瑞光塔 〔蘇州滄浪区〕
  文廟から南西へ1kmほどの位置に蘇州観光には欠かせない「盤門」があり、周辺にも「呉門橋」や「開元寺(通玄寺)」などの見所が多い。この盤門風景区内には一際目立つ「瑞光塔(53.57m)」がある。塔の歴史は、三国後期呉の赤烏十年(247年)建立の「報恩塔(蘇州最早の仏塔)」に始まる。現在の塔の前身は北宋景德元年(1004年)の創建。幾度も戦火に見舞われたがその度に立て直されてきた。
  塔の傍らには「瑞光塔賛碑(1636年立/1676年重立)」が置かれている。これは明太祖朱元璋撰の塔賛詩である。

瑞光塔賛碑 〔蘇州滄浪区〕
碑面の文字は首席で進士に及第(合格)した文人「文震孟(1574~1636)」による隷書である。注目すべきは『呉中四才子』の一人「文征明/文停云(文徴明)1470-1559」の曾孫という点だ。
  ちなみに他の四才子は「唐伯虎(唐寅)1470~1523」と「祝枝山(祝允明)1460~1526」、「徐禎卿 1479~1511」であり、『江南四才子』とも称される。


寒山寺境内 〔蘇州市金ショウ区〕
 最後に寒山寺へ足を延ばしてみる。右の写真はツアー客のみなさんがガイドの説明を聞いているところ。左奥に張継詩碑「楓橋夜泊」が置かれているのだが、性空法師(寒山寺先代住職)の書なので近代のもの。また、多くの方が記念写真に被写体として選ぶ右奥の碑はごく最近の翻刻碑である。

寒山寺各碑について…お時間のある方はこちらをご覧くだされ。

鄧石如聯碑
兪エツ書張継詩碑
唐寅姑蘇寒山寺化鐘疏碑

蘇州後記:
1990年~2005までの旅の記録から。
訪れるたびに発展ぶりに驚かされる点は上海と変わらない。

●次回は「河南省洛陽」です。
   おそらく「龍門二十品」は出てきません。