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比田井南谷レポートレポート   vol.3 The Sounds of Japan

vol.3 The Sounds of Japan

武満徹

一枚のレコード・ジャケットのコピーがあります。

ジャケットの表紙には、南谷の作品が使われています。

“The Sounds of Japan” というタイトルです。小さい文字ですので見にくいですが、
Toru Takemitsu : Eclipse for Biwa and Shakuhachi (1966)
Michio Mamiya : Music for 4 Kotos (19??)
Masao Matsumoto : Poem of Tree and Stone (1957)
Victor の SJV-1509 のステレオ・レコードです。

武満 徹(1930-1996)は、1951年瀧口修造の下に多方面の芸術家が参集して結成された芸術集団「実験工房」の結成メンバーとして、作曲家の湯浅譲二らとともに参加 (21歳)。現代音楽、電子音楽、ミュージック・コンクレートなどを手掛け、前衛作曲家として活躍。

また、映画音楽も数多く作曲し、1960年代では、小林正樹監督の『切腹』(1962)、勅使河原宏監督の『砂の女』(1964)、『他人の顔』(1966)。また『怪談』(監督:小林正樹)では琵琶と尺八が用いられています。このレコードに収録されている「エクリプス」(1966)は、初めて琵琶と尺八のソリストを迎えて、いわばジャズのジャムセッションのように音を戦わせた記念碑的な二重奏曲です。

この『エクリプス(蝕)』はアメリカで活動中の小澤征爾を通じてニューヨーク・フィルのレナード・バーンスタインに伝えられ、依頼されてできあがった曲が、琵琶と尺八とオーケストラによる『ノヴェンバー・ステップス』(1967)です。この作品を契機として武満徹は世界的に著名な現代作曲家となったのです。

The Sounds of Japan(日本の響き)という題に表されているように、収録された他の曲は、間宮 芳生(1929-)の「四面の筝(琴)のための音楽」です。1953年林光,外山雄三と「山羊の会」を結成。日本の民族派の代表といわれ、日本民謡を素材にした多くの作品があります。『三面の箏のための音楽』(1958)、『尺八、三絃、二面の箏のための四重奏曲』(1962)をはじめ邦楽器のための作曲も初期から手がけています。

また、松本 雅夫 (1915-1996) は終戦後、箏曲家、作曲家として現代邦楽の世界で活躍。1950年に旭川フィルハーモニーを設立。1957年に、ここに収録された「木と石の詩」で邦楽コンクール第1位、文部大臣賞、NHK賞を受賞。
この三つの曲を収めた『エクリプス : 現代邦楽名作集』は、Victor のミュージック・ブックにあり、刊行は1971年です。この写真ではレコード・ジャケットの体裁です。

南谷は、1960年前後、新進の前衛作曲家、ジョン・ケージの影響を受けた一柳 慧(と一緒にオノ・ヨーコとも)と交流があり、黛 敏郎とも顔見知りでした。詳細は不明ですが、こうした交流のもとに作品が使われたものと思われます。

南谷の作品は、「心線作品 第58-38」(1958)です。「天来記念前衛書展」(1958)に出品後、ニューヨーク,ミーチュー画廊での個展、欧州巡回の展覧会等を経て、ベルギーのUrvater (コレクター?) の所有となったようですが、所在は不明です。

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