書道で使われる筆のサイズは、一般的に「号」で表示されます。
戦前は尺寸法で表記されていましたが、1966年に小中学校への普及を進めるために、書道用品の生産者団体によって、より簡略な「号」が決められました。
上の表は、1971年に、全国書道用品生産組合によって定められたものです。以降、販売業者もおおむねこれにならっていますが、統一がとれているわけではなく、号数を表記しないメーカーもあります。
筆の主流である竹軸の筆は、1号を最大として2号3号と、10号までしだいに小さくなります。
一方、木軸の筆は4号を最小として5号6号と鋒の直径が大きくなります。4号は直径4分(12ミリ)、1号増えるごとに直径も1分(3ミリ)増えます。これは木軸が大きな筆に用いられることが多いためです。
20号の筆は直径6センチですが、手で持つ部分がそんなに太いと作品が書きにくいため、穂首に近い部分を太くして、しだいに細くなる形にけずります。
学童が書き初めをするときも、小さい手で太い文字を書かなくてはいけないので、先が細くなった木軸の筆を使います。半切1行は8号、半紙三枚つなぎが7号、半切1/4(69×17.5センチ)は6号、というのがおおよその目安です。
とはいえ、実際は竹軸、木軸とも正確ではなく、メーカーによってまちまちです。筆を購入するときは、号ではなく、具体的なサイズによって決めましょう。
鋒の太さのほかに、鋒の長さによる分け方もあります。超長鋒、長鋒、中鋒、短鋒、超短鋒という分け方です。
上は長鋒の羊毛筆。天来書院筆墨硯紙サイトで販売している「雪柳大」という筆で、穗6×59mm 全体296mm、詩文書作品などに使われます。
「千鳥」はコリンスキーを原料とした短鋒筆。同じ太さの線を引きやすいので、篆書や勘亭流などにも用いられます。
かつての書の巨匠たちは、筆の毛質はもちろん、鋒の長さにもこだわりました。
上は中林梧竹の愛用筆。60歳代は超長鋒の羊毛筆を使ったと言われますが、最晩年には極端な短鋒筆を使いました。
その筆を使った作品で、「恬筆以前」と書かれています。
筆の発明者とされてきた蒙恬の逸話はもちろん史実ではなく、筆を改良した人だということになっていますが、それにしても、「蒙恬より前の太古の筆はこうだった!」という梧竹の自信が、この作品にみなぎっているように感じられます。