中国で作られる紙を「唐紙(とうし)」、日本の紙を「和紙(わし)」と呼びます。
ちょっと複雑なのは、「唐紙」と呼ばれる別の紙があること。
中国の福建省で作られる竹を原料とした紙が「一番唐紙(いちばんとうし)」、「二番唐紙(にばんとうし)」などと呼ばれますが、これは日本独特の呼称です。
また、かな書道で使われる「唐紙(からかみ)」は別のものです。
さて、現在、多くの書の専門家が使うのは、中国安徽省で作られている「宣紙(せんし)」です。
すべて手漉き紙ですが、日本と比較にならないほど、大きな規模で生産されています。
上は紙作りが行われている安徽省涇県(けいけん)の風景です。
山の斜面が白くなっています。
何でしょう?
近づいてみましょう。
一面に斜面を覆っているのは稲わらです。
安徽省の周辺農家で作られた砂田稲藁の茎を石灰で煮た後、南向きの斜面に数ヶ月干します。
時間の経過にともない、日光や雨によって柔らかく、白くなっていくのです。
そのほか、中国にしかない「青壇(せいだん)」の樹皮も用いられます。
「宣紙」にもいろいろな種類がありますが、中でも「棉料四尺単宣(めんりょうよんしゃくたんせん)」は「本画宣(ほんがせん)」と呼ばれ、多くの書作家に愛されています。
墨の食い込み、にじみやかすれの墨色が美しい紙です。
明治から昭和にかけて、「本画宣」は人気のある高級紙でしたが、昭和二十年代に中国製の紙が手に入りにくくなりました。
そこで日本でも、中国風の書画用紙が生産されるようになりました。
中国の「本画宣」に対して「和画仙(わがせん)」と呼ばれます。
山梨県の西島和紙の主原料は「故紙(こし)」です。
お札の紙帯テープなど、三椏が原料となった高級紙材で、これにマニラ麻やネリ(トロロアオイ)などを加えて漉き上げます。
西島和紙について、書道テレビでも特集を組みました。
You Tubeの動画はこちら。
日本では各地で和紙が漉かれていますが、書道で使われるのは、ほかに愛媛県の伊予和紙、鳥取県の因州和紙などに限られています。
なお、かな作品を書く時に使われるのは「和紙」がほとんどで、伝統的な細字から中字には、漉き上げた紙(生紙・素紙)に装飾を加えた「料紙」が用いられます。
天来書院の筆墨硯紙サイトでは、半切と半紙、各2種類をご紹介しています。
半切は、中国安徽省、涇県の本画宣「清流箋」と、今や安徽省と並んで二大産地となった、アモイ産のお手頃価格手漉き画仙「玄龍」。
半紙は、「中国浙江省の手漉き半紙」と甲州(山梨県)の機械抄き半紙「漢字用・精華敷島」です。
紙はすべて清秘蔵提供。
清秘蔵主の早川忠文さんは、2003年にビデオ「筆墨硯紙のすべて」(全5巻)中の「中国編・筆墨硯紙のふるさとを訪ねる」にご出演くださいました。
ブログ「筆墨硯紙を楽しむ」では、豊富な写真を駆使し、専門家ならではの知識をご披露くださっています。
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