半紙や仮名などの小さい作品と異なり、現代の書道展では大きい作品が増えました。
そのために大量の墨液を磨るのはかなりの重労働です。
液体墨もたくさん販売されていますが、書き味や墨色の点で、やっぱり磨った墨にはかないません。
そこで考案されたのが「墨磨機」です。
1970年代に登場し、次第に改良が重ねられ、今では多くの人が使うようになりました。
いろいろなメーカーから、さまざまに工夫を凝らした墨磨機が販売されています。
墨磨機には、2つのタイプがあります。
1つは、セラミックの丸い硯がついているもの。
墨磨機のアームに固形墨を1丁または2丁セットし、硯に規定量の水を入れて電源を入れると、硯が回転して墨液ができます。
墨を磨るときに力が入ると、よい墨液を得ることはできません。
また、墨がいつも水につかっていると、ふやけたりひび割れてしまったりします。
上の墨磨り機には、硯面が斜めになった硯がついています。
これを回転させることによって、墨が硯に当たる面積が少なくなります。
また、水をかきあげながら磨るので、長時間水につかっていることもありません。
墨を1本セットするもの SS型墨磨機 墨磨職人 漢字用 かな用 いずれも19,800円+税
墨を2本セットするもの KT-N型墨磨機 32,800円+税
もう1つは、長方形の硯を使う墨磨機です。
墨を動かすもの、硯を動かすもの、両方を動かすものがあります。
いつも同じ場所で磨っていると、そこがへこんでしまうので、硯のおか全体にまんべんなく墨があたるように工夫されたものもあります。
わざわざ墨を磨らなくても、液体墨で十分という考え方もあるでしょう
でも、現在のような、質の良い液体墨が開発されたのは1980年代。
まだ40年しか経っていないので、液体墨で書かれた作品がどれくらいの年数を生き延びるのか、実証されていません。
磨った墨ならではの色調や書き心地を楽しむために、墨磨機を使ってみてはいかがでしょう。