筆
筆墨硯紙
筆墨硯紙

基礎講座

書道で使われる紙

筆墨硯紙の中で、筆・墨・硯は、書道以外でほとんど使われることがなくなりました。

「紙」だけは世界にあふれていますが、書道で使われるのは特殊な紙です。

 

紙は紀元前2世紀頃、中国で発明されました。
製紙技術は十二世紀に地中海を経由してヨーロッパに伝わり、印刷技術の発展にともなって機械化されていきました。

日本では明治時代にこの技術が導入され、現在の日本の紙のほとんどは書籍などに使われる機械抄きの紙です。

 

印刷に使われる紙は、色が白く、光沢があり、張りがあって扱いやすい紙です。

インキが滲んだり紙の裏に抜けたりしないように、表面にコーティングがほどこされています。

 

それに対して、書道では墨をよく吸う紙が好まれます。

また純白より自然の風合いを持った色が好まれます。

そんな要求にあうのは、しなやかな手漉きの紙です。

 

楮の川晒し DVD「紙を極める」より

 

洋紙は木材のチップを用い、一定の品質を持った紙を大量に作ることができます。

それに対して手漉きの紙は、植物の繊維を水に分散させ、目の細かいすのこや網の上に広げて脱水、乾燥して作られます。

すべて手作業のために大量生産ができず、どうしても高価になってしまいますが、化学薬品を使わず、また繊維を痛めることが少ないので、丈夫で保存性が高いという利点があります。

 

洋紙は百年、和紙は千年と言われる所以です。

 

天来の会書展(2019年3月)

 

書道展で見られる漢字作品の多くは「本画宣」と呼ばれる、薄くてにじみやすい中国の紙に書かれています。

中国の安徽省涇県で作られ、稲わらと青檀を原料として、山の斜面に麦わらを干すなど、大きな規模で生産されています。

福建省では竹を原料とする紙も作られています。

 

日本では、楮やミツマタ、雁皮を原料としていますが、書道に用いられる紙は、墨がよく喰い込むように、藁や麻、竹、パルプや故紙も混入されています。

 

かなを書く場合は、にじまないように表面を加工した紙が中心で、美しい装飾をほどこした料紙も多彩です。

 

これらの紙は、一般の文具店には置いてありません。

書道用品店や和紙の専門店で購入しましょう。

扱う場合の注意点なども教えてくれます。