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筆墨硯紙
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基礎講座

墨の色ー油煙墨と松煙墨

墨の色は黒。

 

濃く磨って使えば、墨による色の違いはあまり感じません。

でも、これを水で薄めると、青系から茶系、赤系まで、微妙な色の違いがあらわれます。

 

墨には「松煙墨(しょうえんぼく)」と「油煙墨(ゆえんぼく)」があります。

墨のもつ色の違いは、ここに由来しています。

松煙墨は黒から青系、油煙墨は黒から茶系の色をもっているのです。

 

詳しく見てみましょう。

 

まずは、磨り口です。

左は松煙墨。磨り口は光っていません。

右は油煙墨。磨り口が光っています。

 

なぜこんなことがおこるのでしょう。

 

前にご紹介したように、墨の原料は「煤」と「にかわ」。

墨の色を決めるのは「煤」です。

 

左の煤は「松煙(しょうえん)」。光沢のないにぶい黒です。

右は「油煙(ゆえん)」。黒みが際立っています。

この二種類の煤、実は粒子のサイズが異なります。

 

 

上は、走査型電子顕微鏡で見た松煙墨の粒子です。

大きくて、しかも大小さまざまのサイズが混ざっています。

 

松煙墨は、赤松の幹に傷をつけて脂をふかせ、大きな部屋で燃やして、天井や壁についた煤を集めます。

上の画像は天井にたまった煤。ふわふわと漂う煤は大きなサイズになります。

黒から青系の色をもつ墨になります。

 

続いて油煙墨の粒子。

小さくて、大きさがそろっています。

 

菜種油を燃やしています。

すぐ上に蓋があり、ここに溜まった煤が油煙です。

焼き締められて固く小さい煤で作った墨は、黒から茶系、赤系の墨になります。

 

では、実際に使ってみましょう。

 

 

 

まずは濃く磨った墨。

左から鉄斎(油煙墨)、黄山松煙(松煙墨)、古墨(松煙墨)。

なんとなく色味が違います。

 

薄めてみましょう。

 

違いが際立ちました。

左の鉄斎は赤みが出て、真ん中の黄山松煙は少し青い感じ、右の古墨はもっと青くて、独特のにじみが生まれています。

 

いかがでしょう?

練習では液体墨を使う方も、展覧会で展示する作品には、こだわりの墨を使ってみたくなりませんか?

 

なりましたね? (強引)

 

油煙墨はこちら

松煙墨はこちら

墨の色について、もっと詳しく知りたい方はDVD「墨を極める」をご覧ください。

 

美しい墨色は書の命。

ぜひ新しい世界にチャレンジしてみてください。