札幌の小原道城書道美術館で「生誕150年記念/比田井天来展」が開催されています。
8月4日(金)から11月30日(木)まで、ほぼ4ヶ月にわたる展示とうかがい、8月31日にお邪魔しました。
住所は、札幌市中央区北2条西2丁目41 札幌2・2ビル 2F。
電話は011-261-7888、月曜休館です。
エレベーターを降りると正面が入り口です。
88点にのぼる小原道城先生のコレクションの中から、45点が展示されています。
右奥には、書道関連の書籍もあって、自由に閲覧できます。
展示作品の中から、何点かご紹介しましょう。
落款に大正2年とあるので、天来が42歳のときの作品であることがわかります。
日下部鳴鶴の羊毛筆廻腕法で書かれた貴重な作品です。
天来が上京して日下部鳴鶴に入門したのが26歳のとき。
最初は鳴鶴の羊毛筆廻腕法を学びますが、次第に疑問を持つようになり、筆法の研究に没頭します。
そして、鳴鶴が用いた長鋒の羊毛筆から剛毛筆に変え、俯仰法を発見するのです。
その成果を発表したのが「学書筌蹄」で、天来が50歳のときでした。
60歳代前半の作品だと思います。
厚みのある線と力強いリズムが特徴です。
作品を鑑賞するときは、ただ眺めるだけでなく、筆者が書いた跡をたどってみてください。
新しい世界を追体験することができます。
かつて、天来が発見した俯仰法は剛毛筆によるものでしたが、63歳の頃から柔らかい毛の筆を用いるようになります。
濃く磨った墨をたっぷりとつけ、俯仰法によって書かれた作品には、濃密で複雑な味わいが生まれました。
南谷はこれを「デモーニッシュ」と形容しましたが、上の二点にはその特徴が見えます。
天来は68歳1月4日に他界しますが、63歳から67歳までがもっとも個性豊かな作品が多く、総決算とも言える時期だと思います。
鮮やかな色の紙に書かれた書簡です。
倉卒の書ですが、文字の大小や潤滑など、充実した造形です。
文章内容をまとめると
上京なさった由、ご子息がおたずねくださり、お土産をお届けくださって恐縮しています。
翌朝お訪ねしましたら出発なさった後で、残念でした。
ご依頼の揮毫物はようやく完成し、お届けしようと思っていた矢先、数々ご手配くださり、ご厚情御礼申し上げます。
心のこもった内容です。
会場で一番目を引くのは、なんといってもこの屏風です。
「学書筌蹄」より少し前か、それと同じころの作品だと思います。
剛毛筆による豪快な書です。
かと思うと、このような優美な書もあります。
扇子の骨を抜いて表具されています。
鄭羲下碑の整本も展示されていました。
剪装する前の拓本は大きくて、あまり見る機会はないと思います。
充実した天来作品展示とあわせて、ぜひおでかけください。
北海道といえば蟹でしょう。
美味なることこの上なし。