第8回 比田井天来・小琴顕彰 佐久全国臨書展(12月11日〜21日)。

今年は佐久市立近代美術館ではなく、望月の佐久市立天来記念館ほか3会場で行われました。

スタッフブログにて、授賞式とその後の揮毫会(動画をご覧になれます)の様子をご紹介しています。

私は控えめに(ほんとか?)それ以外のところを!

 

左が佐久市立天来記念館(第1会場)、右には駒の里ふれあいセンター(第2会場)、そして佐久市望月支所があります。

その真中あたりに看板が。(ちょっとわかりにくかったけど)

 

佐久市立天来記念館の比田井天来と小琴の展示室。正面には右に小琴、左に天来の作品が並びます。

ここには開館以来、天来と小琴の作品でけが展示されていました。でも今回に限って

 

臨書展特別賞受賞作品が展示されています。

特別です、特別! 今年だけです! 強調したい。

右の三点が天来賞、次が小琴賞。左には高校生の天来賞が並びます。

受賞作品をご紹介しています。天来賞と小琴賞 それ以外の一般部受賞作品

 

小学生でも立派に臨書します。

天来賞受賞作品は天来記念館の門流作品展示室に展示されました。1年生から4年生まで。

 

小学校5年生から中学校三年生まで。

原本の雰囲気をきちんととっていますね。すばらしい!

 

同じく門流の部屋に展示された特別賞の作品です。

現代的な表現なので、迫力満点。

部屋全体の雰囲気が、いつもとガラリとかわりました。

 

こちらは駒の里ふれあいセンターに展示された作品です。

 

そして、開会式。テープカットです。

左から臨書展実行委員長の吉川徹さん、教育長楜澤晴樹さん、副審査長の高橋蒼石先生、比田井天来生家を守っている比田井恭子さん、地元代表加藤春輝先生。

副審査長は三人で、石飛博光先生は「審査員あいさつ」を、私は「田宮先生への黙祷」を担当しました。

 

午後2時からは、審査員である中原志軒先生(奎星会会長)によるギャラリートーク「臨書と前衛書」です。

会場は天来記念館の視聴覚室です。

 

講師の中原志軒先生。

私は司会をしたので、このアングルからしか撮れなかった・・・。

 

では、内容をご紹介しましょう。

 

「臨書」と「前衛書」って、無関係じゃないの? と思う方も多いかも。

でも、前衛書を作ったのは、比田井天来の門下なのです。

だから作家たちは例外なく「臨書の鬼」!

 

臨書に精進しないと、優れた書のみならず、優れた前衛書だって書けないのだ(きっぱり)。

中原先生がご用意くださった(私もお手伝いした)画像を見ながら、紹介していきましょう。

 

比田井天来が古法を発見した直後に書いた古典の全臨集『学書筌蹄』です。

左は臨「張猛龍碑」で、右は臨「鄭羲下碑」。異なった線質を書き分けています。

これを天来は門下に望みました。

最初の弟子、上田桑鳩先生はたいへんだったそうです。

不教の教え(上田桑鳩・知られざる比田井天来)に詳細に綴られています。

 

比田井天来存命中の1930年に書かれた、上田桑鳩臨「黄庭経」。原本の字形と線質を見事に捉えています。

 

ちなみにこちらは手島右卿臨「光明皇后楽毅論」。1937年、大日本書道院展に出品され、特別賞を受賞した作品です。

これも写実的な見事な臨書です。

 

天来没後、1953年に書かれた、上田桑鳩臨「鄭長猷造像記」。

写実的とは言えませんが、稚拙ともいうべき原本の味わいを見事にとらえています。文字の表情がなんとも言えません。

 

 

上の臨書とほぼ同時期に書かれた「青山近」。前衛書というわけではありませんが、独創的な字形と構図です。

上田桑鳩先生は天来が生きているときに「書道芸術社」を結成し『書道芸術』という雑誌を発行しました。

現代において、書はいかにあるべきか?

そんな熱い議論が戦わされたのです。

 

ちなみに、天来の次男、比田井南谷が、最初の前衛書といわれる「心線作品第一・電のヴァリエーション」を書いたのは1945年。

「これは書であるか否か?」 大きな波紋を呼びました。

 

有名な作品です。上田桑鳩「愛」(1951年)。

「品」のように見える形に対して、タイトルは「愛」。

日展に出品されましたが、これを認めない幹部が多く、桑鳩が日展を脱退するきっかけとなりました。

 

大澤雅休の「黒岳黒谿」(1953年)は、雅休没後、日展に出品しましたが、陳列拒否されました。

なぜ?????

まあ、たいへんな時代でした。(今もか?)

 

これは書ではありません。

画家、長谷川三郎の作品「自像」です。

長谷川三郎は前衛書に興味を持ち、多くの文章を残しています。

 

その長谷川三郎が出題した「鳩」を、いろいろな書作家が書き、『アサヒグラフ』に掲載されたのが上の図版です。

小さくて見えにくいのですが、右上から井上有一・江口草玄・萩原冬眠・比田井南谷。

高松慕真・中村木子・伊東神谷・宇野雪村。

岡部蒼風・大澤雅休・武士桑風・徳野大空・関谷義道。

小川瓦木・手島右卿・上田桑鳩・森田子龍。

ここまで違うか? ってぐらい、それぞれが異なった「鳩」です。

 

最後に、上田桑鳩最晩年の臨「祭姪文稿」です。

失敗した(後には失敗していないものを使った)折帖を黒く塗りつぶし、朱墨や朱色の顔料で書いた臨書。

強烈な印象を与えます。一度見たら忘れられない。

桑鳩の遺言のように見えるのは私だけでしょうか?

 

というわけで、ご紹介したのはごく一部ですが、充実した内容だったこと、おわかりいただけましたでしょうか。

そして、14日には授賞式、その後は市長と審査員による席上揮毫。

 

翌日の「第13回天来祭り」は、川村龍洲先生の講演「信州ゆかりの書人」。

な、なんと、信州出身者やゆかりの深い白隠や佐久間象山、山岡鉄舟、中村不折ら、65名の人と書が紹介されました。

詳細はスタッフブログにアップされると思いますので、少々お待ち下さい。

 

今年は12月という時期だったのでみなさん忙しく、先に帰っちゃいました。最後まで残った方々で記念撮影。

 

写真左端が、小林小百合先生。望月高校の先生です。

小百合先生がこの後連れて行ってくれたのが「ちゃたまや」さん。

こだわりの美味しい卵(卵かけご飯にしてごらんなさい、美味しいのなんの)やシュークリーム、濃厚なプリンなどを販売しています。

おみやげにお薦めです。

 

こちらは、なぜか画像がある「清水屋」さん。

地酒はもちろん、厳選された日本酒・焼酎・ワインを販売しています。

佐久平駅から車で5分。

もちろん、買いましたが、紙コップがないのです。

佐久平駅の売店(二箇所)にもない(汗)。

 

そーせき先生が作った。って、ここまでするか?

結局呑んべの旅でした。

 

おしまい。

書道