象さんの耳打ち
天来書院
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第十回 佐久全国臨書展 天来賞・小琴賞受賞者コメント

先日12日まで開催されていた臨書展は無事に閉幕しました。

コロナ禍の最中ではありましたが、総出品数は勢い衰えることなく3,557点に届き、11/20の授賞式でもほとんどの受賞者が出席され、式典は盛況となりました。

臨書展2021授賞式
臨書展2021_2

 

受賞された皆様、おめでとうございます。

佐久全国臨書展は、書の古典に思いを巡らせ、そこから現代の書を見つめ直そうという思いから生まれました。今この時代に臨書作品専門の展覧会が存在するのは非常に意義深いと感じます。

この展覧会の特色は何と言っても、会派や書道歴にとらわれない作品主義の純粋さですが、そんな中で今回最高の賞「天来賞」「小琴賞」を受賞された方々にコメントをお寄せ頂きました。

 

※現時点で頂いている方のみ掲載致します。後日追記される場合もあります。

※五十音順にて掲載。また敬称は「さん」で統一させて頂きました。

 


▶小田川 澄風さん「天来賞」

原帖名:『地黄湯帖 王献之』

小田川澄風さん

――受賞なさったご感想をお聞かせ下さい。

(小田川) 自分以上に、会の先生はじめ仲間の皆さんが喜んで下さり、それがうれしかった。

ーー書道経験はどのくらいですか? またどのような環境で学んで来られましたか?

(小田川)27年間。うち10年は団体、5〜6年は独学(書道誌)、11年は現在の書道会。主として臨書。

ーー今回より前に『佐久全国臨書展』に出品されたことはありますか?

(小田川)初回から出品しています。

ーー好きな作品や作家を教えて頂けますか? 現代のものでも古典でも構いません。

(小田川)小野道風。傅山。懐素。聖武天皇(大聖武)。

ーー今作の課題(地黄湯帖)を選択された理由をお聞かせ下さい。

(小田川)無理なく筆が運べる。呼吸がわかりやすい。

ーー今作を仕上げるにあたっての思いや、大変だった点などお聞かせ下さい。

(小田川)紙が墨を吸うので、薄めた墨で弱い線を出さないように書きました。

ーー臨書について思うことはありますか?

(小田川)いろんな作品を臨書するなかで思いがけない形や変化に出会い、自身の作品作りにいかしています。

ーー書への思いや今後の目標など自由にお聞かせ下さい。

(小田川)漢字かな交じりの誰にも読める書に興味があります。書いてみるとむずかしく、納得には程遠い現状です。

 


▶徳永 芳園さん「天来賞」

原帖名:『木簡』

徳永芳園さん

――受賞なさったご感想をお聞かせ下さい。

(徳永) まさか受賞出来るとは思っていませんでしたので、本当にびっくりしました。光栄なことで、大変うれしく思います。ご指導いただいた師匠、また選んで下さった先生方に感謝しています。

ーー書道経験はどのくらいですか? またどのような環境で学んで来られましたか?

(徳永)二十数年になります。静鐘会(主催者:細野静耀先生〔松本市〕)で学んでいます。

ーー今回より前に『佐久全国臨書展』に出品されたことはありますか?

(徳永)第6回展より出品しています。

ーー好きな作品や作家を教えて頂けますか? 現代のものでも古典でも構いません。

(徳永)風信帖。

ーー今作の課題(木簡)を選択された理由をお聞かせ下さい。

(徳永)特に理由はないのですが、もともと木簡が好きなので今回選びました。

ーー今作を仕上げるにあたっての思いや、大変だった点などお聞かせ下さい。

(徳永)作品の特徴を掴めているのか? それをどう表現するのか? 毎回悩んで答えが出ません。

ーー臨書について思うことはありますか?

(徳永)古典を臨書することは、基本を学ぶことだと思いますので、大変勉強になります。

ーー書への思いや今後の目標など自由にお聞かせ下さい。

(徳永)師匠や仲間に恵まれて、長く続けることができました。これからも楽しんで書いていきたいと思います。

 


▶西澤 佐泉さん「天来賞」

原帖名:『雁塔聖教序 褚遂良』

西澤佐泉さん

――受賞なさったご感想をお聞かせ下さい。

(西澤)まさか受賞すると思っていなかったので正直驚いておりますが、選んでいただけたことに心から感謝致します。

ーー書道経験はどのくらいですか? またどのような環境で学んで来られましたか?

(西澤)27年。日本書道院で6歳から20歳まで。30歳からカルチャーセンターで賞状技法士講座受講、また日本賞状技法士協会の通信講座受講。その傍ら東京書道教育会通信講座を受講し現在に至ります。

ーー今回より前に『佐久全国臨書展』に出品されたことはありますか?

(西澤)昨年の第9回に初めて出品しました。

ーー好きな作品や作家を教えて頂けますか? 現代のものでも古典でも構いません。

(西澤)空海『風信帖』。褚遂良『雁塔聖教序』。

ーー今作の課題(雁塔聖教序)を選択された理由をお聞かせ下さい。

(西澤)臨書するのはとても難しいと思いましたが、楷書の中でとても好きな古典だったことと、自分の筆耕で書く字形と通じる所があったので、挑戦しようと思いました。

ーー今作を仕上げるにあたっての思いや、大変だった点などお聞かせ下さい。

(西澤)作品の構成(文字数や行数など)をどうするかかなり悩みました。雁塔聖教序の特徴でもある線質の太細、緩急、強弱の変化や起筆の変化などを正確にとらえられるよう意識しました。

ーー臨書について思うことはありますか?

(西澤)臨書から学ぶことはとても多いと思います。様々な古典から学ぶことで自分の書の幅を広げていけたらと思います。

ーー書への思いや今後の目標など自由にお聞かせ下さい。

(西澤)私は書の知識も実力も経験もまだまだ浅いので、臨書においても今は形臨するだけで精一杯です。これから経験を積んでいく中で、さらに意臨、背臨へと奥深くまで臨書できるように努力していきたいと思います。

 


(2022/2/9追記)

▶日向 草笛さん「天来賞」

原帖名:『祭姪文稿 顔真卿』

日向草笛さん

――受賞なさったご感想をお聞かせ下さい。

(日向)この度思いもよらない賞を頂き、身の引き締まる思いです。はじめは何かの間違いかと思い、佐久市に確認の電話をしてしまったくらい驚きました。本当に実力以上の賞を頂いたと思っております。ご指導下さった先生方や支えて下さった皆様に感謝申し上げます。

――書道経験はどのくらいですか? またどのような環境で学んで来られましたか?

(日向)高校時代に授業で指導して下さった先生が、卒業後も書を続けるようにと湖心社の佐々木寒湖先生にご紹介下さいました。仕事をしながらご指導頂いておりましたが、結婚を機に一旦書から離れることになりました。ただ競書だけでも続けてはとお薦め頂いたことで、『書道日本』を通じて諸先生方とのご縁を頂き、湖心社のお友達にも会うことができました。

――今回より前に『佐久全国臨書展』に出品されたことはありますか?

(日向)1回目から出品しています。

――好きな作品や作家を教えて頂けますか? 現代のものでも古典でも構いません。

(日向)好きな作品はいろいろとありますが、2019年の顔真卿展は2回見に行きました。

――今作の課題(祭姪文稿)を選択された理由をお聞かせ下さい。

(日向)顔真卿展での印象がきっかけになり、作品として初めて挑戦しました。

――今作を仕上げるにあたっての思いや、大変だった点などお聞かせ下さい。

(日向)自分自身の体調や身内の介護などで制作に集中することが難しい中、石飛博光先生のカレッジでご指導頂いた経験を元にあれこれ直しながら書いていましたが、力が入りすぎてしまい、結局は一番始めに書いたものを選ぶことになりました。

――臨書について思うことはありますか?

(日向)いろいろな書法を学ぶのが大切だと思っています。佐々木寒湖先生は古典を幅広く知るようご指導なさっていました。

――書への思いや今後の目標など自由にお聞かせ下さい。

(日向)書は支えであり、楽しみです。趣味であれ仕事であれ、それは変わらないと思います。書の中に自分を出して行けたらという思いです。
地元の佐久にちなんだ雅号“草笛”に名前負けしないよう努力して参ります。

※編者注 島崎藤村作詞『小諸なる古城のほとり』にて「歌哀し佐久の草笛」という一節があります。

 


▶柳橋 伸和さん「小琴賞」

原帖名:『伝西行筆 中務集』

柳橋伸和さん

――受賞なさったご感想をお聞かせ下さい。

(柳橋)会派を超えた一流の先生方に評価していただき嬉しく思います。

ーー書道経験はどのくらいですか? またどのような環境で学んで来られましたか?

(柳橋)書道は趣味として会社帰りに書塾で学んでいます。

ーー今回より前に『佐久全国臨書展』に出品されたことはありますか?

(柳橋)第6回展で佐久市教育長賞を受賞しております。

ーー好きな作品や作家を教えて頂けますか? 現代のものでも古典でも構いません。

(柳橋)中務集、山家心中集、寸松庵色紙、高野切第一種、第三種。

ーー今作の課題(中務集)を選択された理由をお聞かせ下さい。

(柳橋)平素から書き慣れている古筆のため。

ーー今作を仕上げるにあたっての思いや、大変だった点などお聞かせ下さい。

(柳橋)墨色は少し濃めに、墨量は少し控え目に、かつ一首の中での墨の潤滑に注意しました。

ーー臨書について思うことはありますか?

(柳橋)臨書は技術が習得できることのほかに、自己の表現を確立するヒントを与えてくれると思います。

ーー書への思いや今後の目標など自由にお聞かせ下さい。

(柳橋)小学生の頃、字を上手に書きたいとの思いで書塾に通いました。還暦を過ぎた現在も同じ思いで書塾に通っています。40年近いサラリーマン人生ですが、余暇は常に書で飾られています。

 


リンク:第10回 佐久全国臨書展 (酔中夢書2021)