象さんの耳打ち
天来書院
象さんの耳打ち
天来書院

新しいブログが始まります(スタッフブログ改)

初日の出

新年あけましておめでとうございます。

ご挨拶がだいぶ遅れてしまい大変申し訳ございません。昨年10月に代表取締役に就任致しました長瀬拓磨と申します。

とにかくコロナに振り回され続け、何一つ予定通り進まない中、どうにか天来書院は乗り切ることができております。これもひとえに皆様のお蔭と衷心より御礼申し上げます。

それぞれが忍耐の一年を過ごし、さて気分も新たに……と思った矢先、政府による再度の緊急事態宣言を検討中とのニュースが入り、不穏な幕開けとなりました。

医療関係者の方々の苦労は言うに及ばず、書道業界の艱難辛苦の声も昨年はたくさん聞こえてきました。

書道というインドアなコンテンツが必ずしもコロナに強いかというとそうでもなく、何より教室が開けずにお困りの先生方、また困難な状況に対応を迫られる学校関係者の方が多くいらっしゃいました。ライブの要素を欠かすことができない「教える」という現場に、壁が高く立ちふさがっていたようです。

しかしそれに屈することなく、新たな日常を手に入れ立ち上がろうと模索を続け、ノウハウを蓄積していらっしゃる方々が活躍中です。

そんな皆様の様々な試みに、弊社としても声援を送らせて頂きたいと思います。

 

さて、私自身が「スタッフ」でなくなるため『スタッフブログ』の名を改めようと社内で話し合い始めたのはいつのことだったか……。気が付けば就任のご挨拶、年末のご挨拶にも間に合わず、せめて新年の営業開始に合わせて装いを新たに、ということでこのたびこのブログを立ち上げました。

 

題して『象さんの耳打ち』。

天来書院のロゴにもなっている「象」は、比田井天来が文芸のことで使用する名「象之(しょうし)」から来ています。

内部から耳寄りな情報をそっとお届け、という意味がいかにもこもっていそうなネーミングですが…ただの思いつきです。

今後の内容も、テーマは持たず徒然なるままに書いていければと思っています。

旧スタッフブログの記事もそのまま残しています。

 

徒然ついでに私自身のことを少しお話ししますと、

フリーで書籍制作を行っている中、縁あって天来書院のお手伝いをするようになったのが2015年。書家の血筋でも何でもなく、書道とは義務教育以来無縁の人生を送って参りました。

そんな人間にとって、テキストシリーズが「何をするための本なのか」自体わかるはずもありませんでした。造像記や藤原佐理の書は「意味のある文字」というよりは「迫りくる何か」として、衝撃とともに受け入れるしかありませんでした。どう消化してよいやら途方にくれたまま長い時を過ごしたように思います。

数年経ち、正式に入社することとなって以降、先人達の臨書、作品の現物、写真や拓本などを鑑賞する機会が増え、多面的に作品に触れることで古典への感じ方もだいぶ変わりました。

歴史の必然がこれほど多様な書を生んだということ、またそれぞれに美しさがあることに興味を覚えましたが、却って開けなくてはいけないドアが目の前にたくさん増えたような気もします…

そのドアのひとつひとつが「書とは何か」の答えにいずれつながるのでしょうか。今はとにかくジタバタしています。

 

この仕事に携わってきたのもまだそう長い期間ではありませんが、それでも多くの方々と関わり、書に対する情熱や問題意識についてお話をうかがって来た中で、皆さんそれぞれに「書」をやっているという強い矜持があり、それは「古典」に根差していると感じました。

近代以降、「書とは何か」という問いかけは続いています。天来書院はその答えの拠り所としての「古典」を、書を学ぶ皆様に提供するための欠かせないインフラであり続けたいと思いますし、それを通して自分自身が成長していきたいと思っております。

日々の雑務から解き放たれた先代社長の比田井も益々血気盛んですのでご安心下さい。

 

しばらくまた巣ごもりと忍耐の時期が続くと思われますが、健康にご留意の上、新しい時代にあってなお揺るぎない書の魅力を一緒に楽しんでいきましょう。

末長いお付き合いの程よろしくお願い申し上げます。