二十世紀初頭、中央アジア地域の探検によって、大量の木簡が発見されました。これは日本の書家にとって一大事。それまで拓本でしか知らなかった漢代の肉筆を見ることができるようになったのですからね。さらに1970年代以降になると、中国南方、とりわけ長江流域の戦国や秦漢の墓から木簡や竹簡が発見されました。
「シリーズ・書の古典」の新刊『木簡・竹簡』は、これらの木簡の中から名品を選び、骨書つきで紹介しています。せっかくなので、この中からから抜粋して、木簡と竹簡の多彩な魅力の一端をご紹介したいと思います。
木簡とは何か? 『簡明書道用語辞典』によると「文字などを書くために成形された木片。木牘」とあります。書道家がお手本にする「木簡」は、20世紀初頭以来、西域地方などから発見された、木片に書かれた文字資料をさします。
木簡発見のニュースを知った比田井天来は驚喜し、漢、晋人の大量の肉筆が印刷された「シャヴァンヌ初版本」を入手し、松田南溟とともに日夜研究を続けました。後に「木簡隷」という独特の書風を完成させます。
上が比田井天来が木簡隷で書いた作品です。ほかにも木簡隷で書かれた作品や石碑がたくさんあります。
新刊『木簡・竹簡』の前半は、天来遺愛の「シャヴァンヌ本」からの印刷です。弊社のレタッチ技術が向上したので、図版も美しく、臨書しやすくなっています。
この木簡、一昨年の「比田井天来・小琴顕彰 佐久全国臨書展」表彰式の後で、石飛博光先生が臨書なさいました。
二千年前の文字が、堂々たる作品として現代によみがえりました!
さて、1970年代以降になると、居延などの西域での発見もさることながら、南方、とりわけ長江流域の戦国墓や秦漢墓から簡牘が発見されます。さらに近年は、複数の古井戸から木簡や竹簡が発見されるに至りました。
1990年〜92年に、敦煌の県泉置で出土した23000枚余りの一つです。「両行(二行書き)」と呼ばれる、債務に関する依頼状。書体は八分。「年」や「令」の最終画を長〜くのばしています。
1972〜74年、額済納(えちな)河流域の居延遺址で出土した19700枚余りの一つ。字形は横長で、波磔を長くのばした整斉な書です。
これは不思議な書体ですね。1993年10月、荊門市郭店村の一号墓で出土した730枚中の竹簡。最古の「老子」です。「楚文字」という字体で、転折部が丸くなっています。この書体に興味がある方は、「続・老子を書く」をおすすめします。
ほかにも、近年出土のいろいろな木簡・竹簡が紹介されています。楽しいですよ♪
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木簡・竹簡(シリーズ・書の古典)
編者−横田恭三・図版監修−高橋蒼石
全文収録・骨書・現代語訳・字形と筆順の解説・臨書作品にふさわしい部分の紹介