書作品の作り方−比田井南谷の場合

2017年2月1日

書にはライブ的な要素がありますね。インスピレーションを受けて一気に書き上げる。特に漢字やかな書道と異なり、文字を書かない場合はとても自由なイメージ。ほら、大きな筆を振り回して、めちゃくちゃになって作品を書く様子を連想する方が多いのでは?

でも、比田井南谷は、全く違います。

これなんか、ライブ的な感じがしますね。でもこのフォルム、実は何日もかけて作り込んだイメージなのです。

これが南谷作品の赤ちゃん。つまり、作品を書く前に、こんな風に何枚も何十枚も何百枚も、鉛筆でスケッチを描き続けます。全体がB5サイズくらいですから、一枚一枚をとると、とってもちっちゃなスケッチです。

そして次に

こんな風に、筆で書きます。イメージがふつふつと生まれていく瞬間です。できあがった作品より、生々しい息吹を感じます。青銅器の饕餮文みたいなのもありますね。こんなふうに、スケッチを作る日々が続きます。子どもが邪魔すると怒ります(おっかなかった)。
そして、気持ちを高め、ある晩、一気に大きい作品を書きます。一つのイメージに対して2点か3点だけ。そして、作品を前にして一杯やります。家族を呼んで、「いいだろー」と自慢したりもします。

作品の紹介もしなくてはいけませんね。これはニューヨーク近代美術館にある「作品63−14−3」。簡単に書いたように見えますが、これを書くために、長期間にわたる準備があるのです。既成の漢字を書くのではなく、自分で形象を作るのですからたいへんです。

去年の南谷展のトークイベントで、こんな話を、秋元雄史先生(芸大美術館館長で金沢21世紀美術館館長)としました。秋元先生は、南谷、井上有一、森田子龍、篠田桃紅当時の個性的な4人の作家を比較して、きわめて興味深い話をしてくれました。

トークイベントの様子はYouTubeで見ることができます。また、DVDも販売しています。南谷のホームページはこちら

どうしてこんなお話をしたかというと、今日、2月1日は比田井南谷のお誕生日なのです♪ 本人がいなくてもお祝いはします。おいしいお料理とお酒の話はまた今度。

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書道