2009年11月11日

墨色と硯の関係

本s.jpg
天来書院で発行したDVD「硯を極める」にご出演くださった為近磨巨登先生著『写真で知る墨・硯・紙』が木耳社から発行されました。






私が硯の表面の微細な凹凸である鋒芒の形を初めて知ったのは、為近先生の最初の本『墨と硯と紙の話』(木耳社)でした。鋒芒は、それまでのこぎりの刃やすり鉢にたとえられていたので、規則的なぎざぎざだというイメージがありました。でもそうではなくて、石英などの固い石の粒による、不規則な凹凸だったのです。

本.jpg今回発行された本にも、興味深い顕微鏡画像がたくさん載っています。
そしてここに、硯の善し悪しが墨の色を決めるというのは誤りだと書かれています。つまり、墨の粒子のサイズは決まっているのだから、上等な硯で磨ってもそれ以上小さくはならないということです。

鋒芒と墨粒子.jpgだいたい、下の方のでかいのが硯の鋒芒、それに対して、墨の粒子はこんなに小さい! これでは鋒芒がいくら細かくてもたかが知れてますね。

やすりと硯.jpg左が砥石で磨った墨、右が硯で磨った墨。確かに同じように見えます。
強いて言えば、よい硯で力を入れずに磨ったほうが、粒子どうしの結合がなくて、一粒一粒に分かれて、いい色になるという可能性は残されているかもしれませんけど。

ビデオ『筆墨硯紙のすべて』を作った時、いろんな実験をしました。明らかに違いがでたものもあるし、出なかったのもあります。「いろいろな硯で墨を磨る」という実験もやりました。その時は、いい硯で磨ったほうが色がいいように感じたのですが、乾いてみたら大差ないという結果でした。

うーん、真実は何処に。

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