2009年8月 6日

戦後の書は消える?

黄色い斑点ss.jpg
ある学芸員の方と話していて、近代美術館が現代作家の書をコレクションしてくれないから、現代の書は将来消えてしまうのではないか、という話をしました。書専門の学芸員をおいてくれないのが問題です。
それもたいへんですが、それより深刻な問題があります。




黄色い斑点.jpgしまっておいた作品に、こんな斑点が出ることありますよね?
保存のしかたが悪かったから、湿気のせいかしら。と反省したりしますが、これは紙を作る時の、洗浄不足によるものです。ですから、本質的にこの紙はだめな紙です。

繊維分析.jpg上は、中国の紅星牌を年代別に調査したもの。左から1966年、1978年、2003年です。→は洗浄不足によって付着した残留物。これがいたずらをするんですね。
書学院の作品の中で、天来と小琴の作品には斑点が出ませんが、南谷と小葩の作品には斑点が出ています(佐久市の比田井生家に預けたものにはほとんど出ていませんけど)。
戦前と戦後で、紙の質に雲泥の差が出てしまったのですね。
戦前の本画宣は高価でした。今はすごく安価で買えますが、これでは困ります。
しかも、防腐剤たっぷりの液体墨で書いたりした日には、何年もつかわからない・・・・・。
少々高価でも、手漉きの和紙を使った方がいいかもしれません。

ちなみに、中国の文房具は、文化大革命によって質が変化したといわれます。

紙密度.jpg上は紙密度の調査です。左から1966年、1978年、2003年です。一番左だけ、密度が高いのがわかります。密度が低いと破れやすくなります。

今から2000年前の木簡が残っているのに、平成の書は100年しかもたない・・・・・なんてことになったら一大事。書道史に穴があかないように、考えてほしいな。

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