〔特別寄稿〕

天来自然公園 15年の歩み(下)

NPO法人未来工房もちづき

4,比田井天来・小琴顕彰「佐久全国臨書展」の開催

天来自然公園建設や天来祭りの開催など、比田井天来を顕彰していこうというNPO未来工房の活動が広がり、「書の里望月」を「書の里佐久市」にという声につながり、2012(平成24)年から、 毎年秋に「佐久全国臨書展」が開催されるようになりました。

 

■2012(平成24)年 第1回 比田井天来・小琴顕彰「佐久全国臨書展」開催

期間 11 月23 日~12 月2 日  

会場 佐久市立近代美術館

日本各地より約3600 余の出品がありました。沖縄、宮古島の子どもたちは賞を受け、授賞式当日は先生ともども佐久まで来てくださいました。

■毎年全国から3000点に及ぶ作品の応募があり、会派を超えた臨書展として書道界でも一定の位置を占めるようになりました。

■NPO法人未来工房もちづきから、理事長吉川徹が実行委員長として、理事2名が実行委員として参加しています。

■この臨書展の企画段階から中心になっていただき、第1回から審査員長を務めていただいた美術評論家田宮文平先生が一昨年ご逝去されたことは、本当に残念で、先生の遺志を継いでこの臨書展の発展に尽力していきたいと考えております。

 

授賞式で挨拶する故田宮文平審査員長 2013年11月

 

5、「天来祭り」の開催

NPO法人未来工房が主催し、2007(平成19)年から「天来祭り」を開催しています。

 

■第1回天来祭り 2007(平成19)年5月12日・13日

 

 

・天来記念館で、天来門流の書家が揮毫した町内商店街の屋号看板や天来揮毫の石碑を見学。かすが荘宿泊。

・比田井和子さん、桑原呂翁先生、天来の会の先生によるシンポジウム「天来が愛した故郷」を開催 。「屏風百双会」「信濃日日新聞社宛書簡」等天来と故郷の関わりを検証しました。(かすが荘)

 

 

・渡部半溟、石飛博光両先生の揮毫会 リコーダー(比田井裕さん)とピアノ(仲宗根香子さん)の演奏に合わせて揮毫(演奏のお二人は、天来のお孫さん)。書の揮毫と音楽がよくマッチしていました。 渡部先生、石飛先生揮毫の書は、注文主の大事な宝物となりました。(かすが荘)

 

 

・書家及び著名の先生方に揮毫をお願いした「はがき、色紙」の展示と販売をしました。

 

■第2回天来祭り 2008(平成20)年9月20日・21日

・天来記念館と比田井天来門流展(佐久市望月支所)の鑑賞。

・田岡正堂、石原太流,梶田越舟、堀吉光4先生による揮毫会。(駒の里ふれあいセンター)

 

 

・天来自然公園内に筆塚を設置したので、筆供養と公園の見学を実施しました。筆供養は正縁寺住職。

 

 

・筆塚の揮毫は高橋蒼石先生。石碑彫りは信州鉄平石(株)の清水朋聡さん、千恵子さん夫妻。手彫りによる石碑作りの新しい担い手が誕生しました。

・講演と座談会 「天来を知る 鑑定のポイント」。講師は「なんでも鑑定団」鑑定士を6年務めた石井久吾さん。(駒の里ふれあいセンター)

・望月宿屋号看板の見学、天来揮毫石碑の見学。

 

■第3回天来祭り 2009年(H21年)9月27日 この年は東京で開催。

 

 

・「天来と門流の臨書について」パネルデスカッション。(アルカディア市ヶ谷)

 

パネリスト 左から

高橋蒼石先生(比田井南谷)、石原太流先生(徳野大空)、山中翠谷先生(手島右卿)、鈴木風允先生(石田栖湖)、

千葉蒼玄先生(大澤雅休)、渡部半溟先生(桑原翠邦)、鈴木一敬先生(金子鷗亭)。

写真には見えませんが、玉村霽山先生(上田桑鳩)。

・懇親会 「未来工房もちづき」より、天来自然公園設立の経緯とこれからの活動の報告。(アルカディア市ヶ谷)

 

■2009(平成21)年10月31日 天来自然公園石碑前広場で交流懇親会 

・栁田佐久市長、田宮文平先生、比田井和子さん、高橋蒼石先生を招き開催 。

市長より「文化振興と交流人口」についてのお話、田宮文平先生、比田井和子さん、高橋蒼石先生より石碑に刻まれた書の説明。市長の来園が「現代書道の父 比田井天来展」開催、天来・小琴顕彰「佐久全国臨書展」の開催に繋がりました。 

・交流懇親会 きのこと蕎麦すいとん、地酒、手作り料理。 

 

石碑前広場での交流会で挨拶する栁田清二市長

 

■2010(平成22)年10月2日~12月5日 佐久市新市発足5周年記念の特 別企画展として、佐久市近代美術館において「現代書道の父 比田井天来展」が開催されました。 

2ヶ月間で約4,500人という大勢の入館者がありました。 

新聞記事はこちら  関連ブログはこちら 

「現代書道の父 比田井天来展」で説明する比田井和子さん 2010年10月2日

 

■第4回天来祭り 2010(平成22)年10月10日・11日

「現代書道の父 比田井天来展」に合わせて開催しました。

・書の里望月の探訪(天来記念館、天来自然公園、天来石碑、屋号看板の見学)。

・比田井天来門流展(佐久市役所望月支所・望月高校書道部の皆様が展示の手伝いをしてくれました)。

・近代美術館「比田井天来展」を、浅沼一道先生の解説で鑑賞。

・大石千世、吉野大巨、渡部會山の3先生による揮毫会。(長野県佐久創造館)

 

 

書道パフォーマンス 望月高校、野沢南高校、飯田高校 飯田高校生は遠くから駆けつけてくれました。(長野県佐久創造館) 

足の裏に墨が付くのも意に介さず筆を躍らせる高校生の姿に感動しました。 

 

 

■2010(平成22)年5月 望月小学校3年生全員が授業として天来自然公園を来訪し学習。この年より、毎年3年生の授業として取り入れていただき、恒例行事となりました。 

 

 

■第5回天来祭り 2011(平成23)年10月22日・23日(駒の里ふれあいセンター) 

・トークショー 「書が生きるまちに」。川村龍洲先生、栁田清二市長、小林一夫さん。司会吉川徹さん。 

・望月高、野沢南高書道部による書道パフォーマンス。

 

 

・市民参加の揮毫会「みんなで書を楽しもう」 。揮毫作品は展示され、田宮文平先生、比田井和子さん、加藤春暉先生の講評を受けました。(かすが荘に宿泊 懇親会) 

・書の里もちづきの案内(天来記念館、天来自然公園、屋号看板、町内天来石碑)。 

 

■第6回天来祭り 2012(平成24)年11月24日・25日 

・第1回比田井天来・小琴顕彰「佐久全国臨書展」を見学。 (ホテル一萬里に宿泊 懇親会)

 

 上の写真は臨書展で行われた、佐久市長と審査員によるパフォーマンス。(長野県佐久創造館)

 左から佐久市長栁田清二さん、石飛博光先生、高橋蒼石先生、川村龍洲先生。

 

・天来記念館見学、特別展示「地元の人所有の天来作品」約30点を鑑賞

・天来自然公園の見学、地元料理で昼食懇親会 。

 

■第7回天来祭り 2013(平成25)年10月13日 (天来自然公園) 

・桑原呂翁先生のお話 「桑原翠邦の想い出、そして書の楽しさ」。 呂翁先生ご夫妻で参加。 

・懇親会 地元の山で取れたキノコいり蕎麦すいとん(つみれ)。 

 

 

■第8回天来祭り 2014(平成26)年10月11日 (天来自然公園) 

・高橋蒼石先生のお話 「天来の人生と書」 。

・懇親会 現場作りのキノコ入り蕎麦すいとん(つみれ)で懇親会。 

 

 

■第9回天来祭  2015(平成27)年10月17日 

・金子家の蔵を会場にして、卓義先生の収蔵品を、ご子息大蔵先生の解説で鑑賞。

・金子大蔵先生のお話「書と私たちの暮らし」。懇親会。(片倉公民館) 

 

 

■第10回天来祭り 2016(平成28)年11月19日・20日 

臨書展受賞者の皆様にも声をかけ、オプションツアーとして、天来祭りへの参加を呼びかけました。 

・宿泊は春日温泉かすがの森(かすが荘)。審査員・臨書展受賞者と地元関係者で懇親会・ 

・天来小琴及び門流書家の作品を石飛博光先生の解説で鑑賞。(天来記念館) 

・石飛博光先生の講演と小作品の揮毫 昼食懇親会。(片倉公民館) 

・天来自然公園、慰霊の碑、屋号看板の見学 。

 

 

 

■第11回天来祭 2017(平成29)年11月25日・26日 

・オプションツアーのみなさんと地元関係者の懇親会。かすがの森宿泊。 

・講演と作品の揮毫 慶德紀子先生。仮名文字の揮毫会は天来祭りでは初めてでした。地元の仮名書家も参加し、感動の様子がうかがえました。(片倉公民館) 

 

 

・書の里めぐり 天来自然公園、慰霊の碑、屋号看板等

 

 

関連ブログ

 

■第12回天来祭り 2018(平成30)年11月17日・18日 

・臨書展表彰式の後、かすがの森宿泊。オプションツァーのみなさんと地元関係者で懇親会。 

・特別展(書宗院選抜展)を古谷春峰先生の解説で鑑賞。(天来記念館) 

・古谷春峰先生の講演と揮毫会。(桜ヶ丘ふれあいセンター) 

 

 

 揮毫会には、書宗院の佐藤容齋先生、内田蘭亭先生と地元より小林小百合さん、小林和史さんが加わりました 。

・光徳寺(立科町)にて桑原翠邦先生作品群を鑑賞 。

 

関連ブログはこちら

 

■第13回天来祭り 2019(令和元)年12月14日・15日 

・オプションツアーのみなさんと地元関係者で懇親会(かすがの森宿泊) 。

・川村龍洲先生の講演と揮毫。ご子息ご夫婦、お孫さんも出席してくださいました。(片倉公民館) 

 

 

・昼食懇親会 

・比田井天来生家の見学  生家に比田井天来・小琴と門流の作品を特別展示し、高橋蒼石先生の解説で鑑賞。太い柱、梁、旧家のかもし出す雰囲気に包まれ展示品を味わいました。未来工房もちづきで準備等に参加した会員も生家を訪れました。

 

 

 

 

 

【比田井昭三さんを偲ぶ】 

 

自宅(天来生家)の前で説明する故比田井昭三さん(左端)2010年10月  第4回天来祭り

 

昨年(令和2年)8月、93才で比田井昭三さんが亡くなられました。私たちの大黒柱でした。陰になり日向になり縁の下の力持ちとなって支え続けてくださり、また大所高所の立場で意見をくださいました。有り難う御座いました。心より感謝申し上げます。 

昭和26年に大学を卒業し、最初の赴任地は、天来の母校、協和小学校でした。生地、前山村から協和村まで約16㎞の未舗装の道を、自転車にリヤカーをつないで運搬車にし、布団、衣類など生活用品を積み、運んだとのことです。ようやくたどり着いた天神区で、「俺のゆく小学校は何処だ?」「あの山の上だ」と聞かされがっくりきた、とても大変だったと話してくれました。小学校の用務室でしばらく寝泊まりしたそうですが、下宿先は天来の生家、比田井家の門長屋に決まりました。(この門長屋の跡地はやがて「生誕の地碑」の建立場所となります。)門長屋での下宿生活を始めて7ヶ月余、昭三さん比田井きよみさんの若いお二人にロマンスが生まれたようです。夫婦誕生に至りました。昭三さんは学校を退職し、旧家のそして天来生家の当主として大変な道を歩み始めました。 

昭三さんときよみさんは、とても“気さく”な性格のご夫妻です。訪問時、廊下の窓越しに声をかけると、最初が「上がれ、上がれ」の言葉でした。遠慮なく、廊下ごしに居間に上がり込みました。 テーブル、炬燵を囲む時は、ほとんど、きよみさんも一緒でした。 きよみさんの,美味しいお茶をいただきながら話がはずみました。訪問者の皆様に気軽に声をかけ、話をするご夫妻でした。 

昭三さんは、一方では反骨精神を持った、筋道を通す人でした。どちらかと言えば、保守的で昔かたぎな土地柄の町長選挙で、進取に富んだ候補(吉川徹さん)の後援会長を3回も務めました。候補者が2回目の挑戦で当選を果たした時、「娘たちの結婚式でも涙を見せなかったのに、この時父は涙を拭いていた。こんな姿を初めて見た」と母は言っていました(娘の恭子さんの話)。律儀で実直な昭三さんでした。最晩年は耳が遠くなり、筆記による対話となりましたが、優しいまなざしでうなずく姿が、お人柄をしのばせ深く心に残っています。ご冥福をお祈り致します。

 

2021(令和3)年2月

本文執筆 NPO法人未来工房もちづき 天来自然公園部会長 上野 昭久 

発行責任 NPO法人未来工房もちづき 理事長 吉川 徹