天来書院

天来の会書展


展覧会場風景

「比田井天来没後80年記念・天来の会書展」(2019年2月26日〜3月3日)は、東京銀座画廊美術館7Fの2室を使い、合計で399点の作品が展示されました。
 すべての展示作品はネットで見ることができます。(⇒展示作品はこちら

「一本会徳利」
一本会徳利

会場入口に展示された「一本会徳利」(比田井天来書)。
 「節酒同盟一本会長・兼書学院長 天来道人」などと書かれた徳利が5本あります。
天来が主宰する書学院には、天来に呼ばれた若者たちが全国から集まりました。日曜の稽古のあと、残っている弟子たちに天来はお酒と食事をふるまいました。でも、居心地がよかったらしく、飲み過ぎる人が多かったようです。そこで生まれたのが「一本会」。「お酒は一本にすべし」というわけです。天来らしいのは、徳利のサイズは自由であること。バケツでも一本!
 書に夢をふくらませ、一途に歩もうとする若者たちの情熱と、それを見守る天来の愛情と期待が、今もここに息づいているようです。


書学院同人
書学院同人

寄せ書きと書学院同人の作品コーナーです。
昭和44年3月21日、書学院同人17名が、長野県望月町(現在の佐久市)にある天来生家を訪れ、天来と小琴の墓参りをしました。そのときに書いた寄せ書きが右の小画宣全紙の条幅です。
 右上から(村上)北海、その下が(沖)六鵬玄和、上野利友(天来の書生で後書学院出版部勤務)、その左は(藤本)竹香銀。
 上に戻って(比田井)やす(小葩)、左に小さく(比田井)南谷、下が(桑原)江南通、左下が(手島)右卿、右下が(天野)翠琴、左に(岡部)蒼風。
 上に戻り、(金子)鷗亭、左が(桑原)翠邦、(石田)栖湖、下が(大森)萬里、左が(石橋)犀水啓、(堀)桂琴、左下が(原田)春琴、(松尾)謙三。
 左上に、昭和四十四年三月二十一日 書学院同人十七名参会合作於比田井昭三氏邸 南谷誌。

記念写真

寄せ書きを書いたときの記念写真です。
 最前列左から二人目は松尾謙三(晩翠軒)、天野翠琴、金子鷗亭、手島右卿、桑原翠邦、報国寺住職、比田井南谷、石橋犀水、桑原江南、堀桂琴、沖六鵬。
 二列目 左から6人目が石田栖湖、2人おいて岡部蒼風、比田井小葩、大森萬里、原田春琴、村上北海。
 三列目 右端が比田井家当主比田井昭三、右下比田井清美。

続く展示は宇野雪村、比田井小葩、大森萬里の作品、書学院同人です。

書学院同人

写真の右から5番めは比田井小琴、次は比田井天来。二人の両側に書学院同人の作品が並んでいます。
 天来・小琴の直門は数が多く、選ぶことは困難です。そこで1972年に日本橋三越で開催された「天来生誕百年展」に併催された「比田井天来門流展」ポスター(⇒天来の会書展の歴史)により、メンバーを確定しました。今回展覧会に参加した団体の協力を得られた作家の作品が展示されています。
五十音順で天野翠琴、石田栖湖、上田桑鳩、宇野雪村、大沢雅休、大森萬里、沖六鵬、金子鷗亭、桑原江南、桑原翠邦、武士桑風、手島右卿、徳野大空、原田春琴、比田井小葩、比田井南谷、堀桂琴、村上北海。


出品作品は「漢字」「かな」「詩文書」「少字数書」「前衛書」「篆刻その他」のジャンルに分かれ、それぞれ出品者名の五十音順に展示されています。比田井天来は、地位や年齢の上下によって分け隔てをせず、平等に接したので、第一回大璞会書展から作品は五十音順に展示されています。


漢字
漢字

漢字部門の展示です。天来の指導はすべて古典の臨書で、手本を書くことはありませんでした。自運や臨書など、文章の内容や字数は自由です。作品は多彩ですが、表現の基本は臨書なので、共通の響きが感じられます。

かな
かな

比田井小琴の門流による「かな」作品のコーナーです。古筆の臨書を大切にしているので、派手ではありませんが、格調の高い、暖かく瑞々しい作品が並びます。


詩文書
詩文書

詩文書部門です。金子鷗亭は伝統的な漢詩や漢文ではなく、現代のことばを書こうと主張しました。毎日書道展では「近代詩文書」という名称がつけられていますが、「日本詩文書」「現代文の書」など、いろいろな呼び方がありますので、本展では「詩文書」としました。


少字数書
少字数書

少字数書部門です。手島右卿は、一字あるいは二字を素材とすることによって、造形性に優れ、漢字の意味をも内包した表現世界を追求しました。濃墨作品やにじみの美しい淡墨作品が並びます。また、「書は命の躍動であり、生き方のかたちである」と語った森田子龍が創設した墨人会の作家による力強い作品も印象的です。


前衛書
前衛書

1945年、比田井天来の次男、比田井南谷は、文章として読めない作品「電のヴァリエーション」を発表し、書壇に衝撃を与えました。上田桑鳩は従来の価値基準を離れた独自の書を次々を発表し、書壇の指導者となりました。大澤雅休もまた独創的な造形の作品を書き、大きな影響力を持ちました。多彩な前衛書の作品が並びます。


ビデオコーナー
ビデオコーナー

比田井天来と直門のDVDが随時放映されました。
「現代書道の父・比田井天来の生涯」
「書・二十世紀の巨匠たち④」 出演者(抜粋)上田桑鳩・手島右卿・宇野雪村・金子鷗亭・比田井南谷
「炎の書人・上田桑鳩」
「生誕100年記念・金子鷗亭の書」
「桑原翠邦・書宗院展60回記念」
「手島右卿の書芸術−その世界」
「比田井南谷」
「表立雲インタビュー」


ギャラリートーク
ギャラリートーク

3月2日、講演とパネルディスカッションの後、世話人によるギャラリートークが行われました。写真は石飛博光先生。ほかに石原太流先生、高橋蒼石先生、中原志軒先生が担当しました。


天来の会書展:天来書院