筆
筆墨硯紙
筆墨硯紙

基礎講座

筆の作りかた

 

書道で使われる筆はどのように作られるのでしょう。

江戸筆の特徴は、一人の職人が数多くの工程を一貫して仕上げるところにあります。

鳳竹堂の佐久間鳳翔さん(板橋区無形文化財)の筆づくりをご紹介しましょう。

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鳳竹堂                                   筆匠・佐久間鳳翔さん

 

 

まずは毛の下ごしらえです。毛がついた皮ごと煮沸し、毛を抜くところから始めます。

 

 

イタチ(コリンスキー)

 

右はイタチ(コリンスキー)の原毛。これを煮沸して毛を抜いたのが左です。

これに籾殻(もみがら)の灰をまぶして火熨斗をあて、鹿の皮に包んでもみます。毛の脂肪分や汚れを取り去るためです。

 

 

コリンスキーの綿毛

 

 

櫛を使い、綿毛を取り除きます。10分ほどの作業でこんなにたくさんの綿毛が出ました。

 

 

サイズごとに分類

 

「寸木」と呼ばれる定規をあて、サイズによって分類します。貴重な毛を合理的に使うためです。

 

 

尖ぞろえ

 

次に、「手金」と「手板」を使ってリズミカルに毛先をそろえていきます。

小刀を使い、逆毛や先のない毛を取り去ります。先が擦り切れた毛は、筆の大事な部分には使えないからです。

時間をかけて、丁寧によい毛を選別します。

 

 

 

厳選した毛をまぜて「平目」を作ります。

 

 

平目

 

兼毫筆を作るための平目が揃いました。

右端は筆の尖端になるイタチ(コリンスキー)で、その左は尖端の滑らかさを出すための牛耳毛。続く茶色の馬と黒馬で、根本をしっかりさせます。一番左は「さらい出し」という先のない毛で、穂に強度をつけます。

 

 

 

尖端になる毛から順に重ねていきます。

 

 

 

重ね終わったら、毛の根元を切り捨てます。

 

 

 

重ね終わったところ。四種類の毛が層になっています。

 

 

練り混ぜ

 

筆づくりはここからが勝負。かたよらないように、何度も何度も、まんべんなく混ぜ合わせます。

 

 

 

混ぜ終わったら、一本分の大きさに分け、「コマ」と呼ばれる短い筒に通して太さを一定にします。

 

 

 

コマに通した状態。

 

 

 

ここに、上毛を巻いていきます。

 

 

 

穂首が完成しました。このまま乾燥させます。

 

 

 

穂首の根本を糸で締め、焼きごてをあてて固めます。

 

 

 

軸の準備です。小口を小刀でえぐります。

 

 

 

軸の内側に接着剤をつけ、穂首を差し込んで完成です。

固め筆の場合は、ふのりに浸して、糸を巻き付け、回転させながら余分なふのりを落とします。

 

一本の筆を作るために、こんなに複雑な過程があるんですね。

 

 

ちなみに、中国ではどうでしょう。

 

 

たくさんの女性がいっしょに作業しています。日本よりずっとたくさんの筆が必要とされているのでしょう。

 

 

尖端がクシになった板で、練り混ぜまで行われていました。これは、「写巻」のような、ウサギの毛と羊毛を使った小筆です。

 

書の作品を書くために、絶対に必要な「筆」。今では原料も少なくなり、日本の職人も激減してしまいました。

よい毛を選びながら、毛の状態を確かめながらの作業は、機械ではとても無理。

若い人の中から、優れた職人が生まれることを願ってやみません。