2016年から配本が始まった「シリーズ・書の古典(30冊)」。
いよいよ最終配本(全6冊)が始まりました。
今日は、その中から「金文」と「喪乱帖他」の内容をご紹介します。
まずは、9月発行予定の「金文」です。
編集は、中国古代文字学者、高久由美先生(新潟県立大学教授)に掲載図版の選考と釈文を、書宗院総務理事の佐藤容斎先生に「骨書」をお願いしています。
内容は、殷から戦国時代までの典型的な金文です。
大盂鼎・散氏盤・毛公鼎などよく習われるものは踏襲しながら、新たな観点で内容を一新しました。
掲載されるのは殷の金文が11種、西周前記が10種、西周中期が8種、西周後期が9種、東周列国が17種。
目次をお伝えしたいのですが、表示されない難しい字があまりに多いので省略。
現在鋭意作字中!
掲載作品55種の中で、テキストシリーズと重複するのは19種です。
つまり、6割以上が新しくなるのです。
しかも、高久先生こだわりの最良の拓本が厳選されています。
中でご注目いただきたいのは、比田井天来旧蔵の「墨皇帖」からも6種選ばれていること。
清代金石学の最高峰、呉大澂が金文の拓本をとり、一点ごとに器名と解説を書き込んで自ら印を押し、日下部鳴鶴に贈ったものです。
「愙斎」は呉大澂の号。
「商(殷)の鼎の最精なるもの」と絶賛していますね。
この拓本は本邦初公開です。
続いて、本年11月刊行予定の「喪乱帖他」です。
テキストシリーズでは、「王羲之尺牘一」「王羲之尺牘二」というタイトルで販売されていますが、今回は一冊にまとめました。
編集は、比田井南谷に師事した高橋蒼石先生(書宗院理事長)。
南谷は、「餘清齋帖」や「修正古法帖選」「激素飛清閣帖選」などを発行した比田井天来の後を継いで書学院出版部を創立し、優れた法帖を発行しました。
比田井南谷のホームページはこちら。
その時、南谷のそばで、編集助手をつとめていたのが高橋蒼石先生だったのです。
だから、法帖にはちょいとうるさい!
蒼石先生が選んだのは、
墨本
「喪乱帖」「二謝帖」「得示帖」「哀禍帖」「孔侍中帖」「憂懸帖」「姨母帖」「初月帖」「遊目帖」「行穣帖」「平安帖」「何如帖」「奉橘帖」。
法帖
【快雪堂帖】「快雪時晴帖」「毒熱帖」「自慰帖」「官奴帖」「十月五日帖」「四月三日帖」「数都問帖」「東比帖」「羊参軍帖」「胡母帖」「諸従帖」
【大観帖第六巻榷場残本】「近得書帖」「昨書帖」「敬予帖」「旦極寒帖」「虞休帖」「建安霊柩帖」「追尋傷悼帖」「適太常帖」「司州帖」「郷里人書帖」
【澄清堂帖・紫藤花館本】「知世帖」「大都帖」「現日帖」「罔極帖」
【澄清堂帖・廉氏本】「伏想清和帖」「夜来腹痛帖」「採菊帖」「想無悪帖」
【澄清堂帖・孫氏本】「足下散勢帖」「二謝在帖」「奉告帖」「大熱帖」「豹奴帖」「増哀懐帖」
【餘清齋帖】「思想帖」
【真賞齋帖】「袁生帖」
ご注目いただきたいのは、以前、書学院出版部からも発行された「大観帖第六巻榷場残本」です。
法帖の中で、もっとも有名なものは、宋の太宗皇帝の勅命によって編纂された「淳化閣帖」です。
しかし偽物が多く含まれ、全体の構成も妥当性が欠けているため、改訂版として、宋の徽宗皇帝が作ったのが「大観帖」です。
「大観帖」には、影印本がほとんどなく、あっても明代の重刻本。
ところがところが、すばらしい本があるのです。
それが「大観帖第六巻榷場残本」。
そう、残念ながら第六巻のみです。
今回の原本は、翁方綱が所蔵したもので、法帖の余白にびっしりと考証が書き込まれています。
今回掲載されるものの中から、2ページ紹介します。
右ページの二行目から始まるのが「適太常帖」で、左ページの二行目からは「司州帖」が始まります。
右上には「米云真」、左上には「米云此帖真」。
両方とも、米芾が「本物だ!」と言ったというわけです。
王羲之の肉筆を彷彿とさせる名品です。
ほかにもこだわりの逸品が勢揃い!
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