お客様にご注文頂いたお碗が完成。
以前から輪島塗りのお碗が欲しかったそうで、この後、ご夫婦で使われる2客を納品させて頂きます。

奇しくも、テレビで輪島塗りの※抗菌性を知り、コロナ禍の中で「改めて塗物は良いですね」とご評価いただいた次第です。

※漆の殺菌効果
漆がもつ強力な抗菌性について金沢工業大学の研究室が比較実験を実施。結果、「漆器についた大腸菌は24時間以内にほぼ死滅する」ことが立証されました。

比較実験で伝承を立証
漆は以前から防腐や防虫効果があるといわれてきましたが、この実験からはプラスチック製品等、食器や生活用品に使われる素材と比べて強い殺菌作用が確認された次第です。

漆の抗菌活性値は、JIS規格で抗菌加工製品として認められる値:2.0を上回る3前後を記録。また、カビについても一定の抗菌性が確認されました。

【実験内容】
黒塗、朱塗り、単純な漆膜、プラスチック(ポリウレタン)などの樹脂、ヒノキなどの木材に大腸菌とカビを付着させ36度下で1日放置。それぞれの菌数を比較する。

【実験結果】
・プラスチック製品に使われるポリウレタン・ポリプロピレンは大腸菌は死滅せず。
・漆器は大腸菌は1/1,000に減少し、カビについても抗菌性が見られた。
・木材ではヒノキ、ヒバ、アテ(石川県の県木。輪島塗りの素地にも使われる)で抗菌効果が見られた。

「ヒノキの風呂は手間いらず」と言われていますが、昔の人は抗カビ効果を経験から知っていてそれが伝承されてきたのだと思います。

また、漆の成分であるウルシオール自体に殺菌効果がありますが、ウルシオールが水に溶解しても殺菌効果があるようです。

実験により自然界に存在する漆の安全性の高さが確かめられ、抗菌性を持つ漆器は食器などの利用に適していることが判明。この実験以外にも漆器を地場産業にしている京都府、福井県、岩手県、香川県が同様の実験を実施。京都府の実験では、大腸菌やMRSA、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ等々に対しても漆の抗菌性が確認されてました。

幼少の頃、輪島の実家には冷蔵庫がなく、食べ物は輪島塗りの戸棚に保存していました(当時は真夏でも30度を超すことはありませんでした)。また、夏になると父親が山から山水を汲んできて、輪島塗りの桶に入れていました。「輪島塗りの桶に入れると夏でも水が腐らない」と父は言っていました)。同様に花も輪島塗りの花器で飾ると長く咲き続けるようです。お正月、お節料理は当然輪島塗りの重箱で保存。これにも理由があったようです。

これらの言い伝えは、実は科学的にも立証されていることを知りました。時節柄、食中毒のニュースをテレビで観る度に(我々大人はまだしも)、せめて子供達の学校給食で使う食器らプラスチックから塗物に回帰してみてはどうか?と思って止みません。

漆器は美しさや堅牢性だけではなく、『天然の抗菌作用をもつ食器』であることを前面に出し、正にコロナ禍にも対応し得る可能性のある食器として世界にも広めていきたいと思います。