山々が重なり遠近感があります。こんな小さな容器の中で山々を表現。見るを人をして自分がこれまでに見て感動した山や景色を思い出させてくれます。圧倒的な存在感があり、並の棗ではないような雰囲気を醸し出しています。

作品は金を分断に使っています。今、同じ物を作るとなると、金の価格が当時に比べて5倍以上に高騰していることから金だけでも相当な価格になりそうです。職人が作ることを(この価格で果たして買ってもらえるのか?と)躊躇いそうなくらいです。

子供の頃、この作品の蒔絵師の家に、父に連れられ行った帰り道(前回のつづき)。日差しの強い秋の日の午後。その家の裏の土手はハゼ釣りの子供達で賑わっていた。当時、秋になると子供達は学校が終わると釣り竿を持ち自転車で河口に向かう。そして夕方、薄暗くなるまでハゼ釣りをしていた。

それが近年、秋に輪島に帰省してもハゼ釣りをしている子供はいない。町は人口減少が加速し、急速に高齢化が進む。30年前に比べても、子供は1/3以下だとか。勿論、食生活が向上した、魚釣りよりもゲームの方が魅力がある等々、色々理由があるだろう。

いずれにせよ、地方に於いて季節の風物詩が無くなっていくのは寂しい限りです。