今回の作業は中塗りです。
最終仕上げの塗りになる上塗りの一つ手前の工程です。

アクセサリーに合わせて小さな筆を使って塗ります。ここで初めて黒い漆を使い塗物らしくなってきました。普通は中塗り用の漆を使うのですが、先生は中塗り用の漆の茶色っぽい黒を嫌い、上塗り用の真っ黒な漆を半分ずつ混ぜています。その辺は職人毎の判断のようです。

中塗り後、漆が乾いてから研ぎ炭を使い表面に付いた塵や埃から出る凹凸を研いで平坦にします。下の写真の上半分は研ぎ終えた状態、下半分は研ぐ前です。

研ぎ炭は国産の最高級のものを使います。今ではそれを作る業者は国内に何と一軒しかないそうです。価格もみかん箱一箱で12万円也。それでも、その中で実際に使える品質なのは僅か丼に一杯分しかないとのこと。これにはビックリ。

木は油桐で切ってから3年間寝かせてから炭にするそうです。炭はまず研ぐ物の形状に合わせ砥石で削り形を作ります。やはり、使う道具は自分で作るんですね。
お盆や重箱を研ぐ際には、形状を細長くして砥石で表面を平らにします。今回はアクセサリーなので炭もそれに合わせて小さな物を作って準備しました。

炭の表面を平らに削って適度に水をつけて研ぐと、漆の凹凸は無くなります。ただ、同時に炭自体も削れていく為、定期的に砥石で炭の研ぎ面を平らに削る必要があります。
研いでる途中に炭が削れ水と合わさり、真っ黒な粘りけのある墨が出来てきます。これは書道に使えるのではないかと思いました。

この作業を二回繰り返します。一回目は11月3日、二回目は先週末です。年内に何とか中塗りまでの工程を経験したかったのと、今月初めに予定している個展で作品をお見せしたくて一月に二回の帰省を強行した次第です。

写真は輪島の知り合いの魚屋さんに作ってもらったお刺身盛り合わせです。会社の同僚が大阪から訪ねてきてくれました。事前に食べたい魚と予算を電話しておけば用意してくれます。

毎朝、魚市場に仕入れに行き、朝獲れを出してくれる正に究極の魚屋さんです。これを食べると首都圏のスーパーは勿論、飲み屋さんの魚は食べれなくなります。

また、帰省する度に地酒を買ってたので、ついつい増えてしまいました。やはり、能登の魚には能登お酒が一番ですね。

途中に通った松本から安曇野辺りは紅葉が残っていましたが、安房峠(トンネル)を超えるとすっかり冬山になっていました。

自宅のある藤沢から輪島までの最短ルートです。480kmを中央高速を使えば約8時間、下道の甲州街道なら約11時間の一人旅です。今年は9回帰省しました。

輪島への帰省は今年はこれで最後になりました。次回は来年4月以降になります。9月から研修の講師を務めてくれた中学時代からの親友には感謝しています。

下地の工程は難しいですが、何とかなりそうな気がしてきました。また、作品作りの各工程での具体的な作業を理解出来き、とても貴重な経験になりました。

そして、何よりもDNAを繋いでくれた祖父や曽祖父、親に感謝です。確かに所々でDNAは引き継がれている気がしました。