完璧な春の日曜日。
天気は穏やかで、何より花粉がめっきり影をひそめている!
道行く人はマスクを外して開放的です。外国人はもう半袖です(なぜ?)。
自由が丘の街並みは色彩豊かで、遊園地のようです。
向かう先は「ギャラリー自由が丘」で行われている、書家・尾崎學(おざき がく)先生と絵画造型作家・ペケ キムラ先生の二人展です。
モノトーンの書と、カラフルな絵画の出会いがどういうものなのか、興味津々です。
さっそくワクワクするような光景が飛び込んできます。
正面にはレザー素材にペイントされたペケさんの作品、右手には規模の大きな尾崎先生の書がかけられています。
どちらにも溢れ出すような躍動感が共通していて、かけあわさることで「ウズウズしてどうしようもない遊び心」とでも言うべきものを生み出しているようです。
つぶさに見ると、尾崎先生の作品はご出身の「川越」をテーマにまとめられていることがわかります。セピア色の写真が作品横にかけられており、これが作品の解説を兼ねるとともに、鑑賞者を川越の粋な世界にいざなうことに一役買っています。
「蔵」。川越は「小江戸」の名にふさわしく、蔵造りの街。先生も幼少の頃、蔵は遊び場だったようです。
「遊白帆」。舟で荒川を下って江戸へ繰り出したという豪気な遊びが昔は行われていたようで、今では考えられない話です。
こんなかわいい絵の入った作品もあります。
何というか、先生の作品には「酒」と「遊び」が切り離せないような気がするのですが……
さて、ペケ キムラ先生の作品です。
このときはご本人があいにくいらっしゃらなかったのですが、尾崎先生とは川越を通した地元の縁があるそうです。
これでもかというくらい野生です。川越発アフリカ行。
この作品が……
なんとそのうちバッグになってしまうんだそうです。
コワかわいい顔の小物。ひとつも同じでないのに、不思議とまとまりがあるので「世の中いろいろあって楽しいよね」という感じになります。
素晴らしい一日でした。もう少し早くご紹介できたら良かったのですが、この展覧会は現在終了しています。いずれまたお二人のコラボ空間を楽しみたいです。
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さて。尾崎學先生には、天来書院から本を出して頂いています。
『王羲之の手紙 −十七帖を読む−』尾崎 學 著・天来書院 刊
いわずと知れた書聖・王羲之の名品「十七帖」は、すべて誰かに宛てた「手紙」29帖から成っています。
「二十九帖」なのに「十七帖」。これいかに?
時代が下って唐の時代、王羲之の大ファン「唐太宗」が、王羲之の書いた手紙作品29帖をまとめさせました。その冒頭が「十七日先書……」と始まるため。だそうです。
手紙はあくまで私的なものです。内容を見れば、「書聖」というかしこまったイメージではなく、「酒好き」「健康オタク」「子供っぽいくらいに人懐っこい」などなど……手紙を勝手に読んでしまって王羲之先生には悪いのですが、意外な人となりが浮かび上がり、親しみが湧いてきます。
それぞれの手紙が書かれた背景も交え、十七帖を軽妙に解き明かしていく読み物です。
王羲之の作品を「書く」のではなく「読む」。新鮮な体験です。
実はこの書籍、申し訳ないことに、多くのご要望を頂きながらも品切の状態が続いておりました。
しかし現在、増刷のため作業を進めております。楽しみにしていて下さい。
※2018/6/14増刷完了致しました。商品ページはhttp://www.shodo.co.jp/books/isbn-259/
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