呉大澂『恒軒吉金録』日下部鳴鶴旧蔵(中編)

   左図は「微子鼎」。呉大澂の所蔵器である。
右図は器の内側に鋳込まれた銘文。



上に掲載したのは、呉大澂が日下部鳴鶴に贈った金文や瓦当文の原拓を貼り込んで画帖に仕立てた「墨皇帖」中にある「微子鼎」の拓本。文字は呉大澂の自筆。「海内の至宝である」とし、自分の齋号である「愙斎」(かくさい)の愙の金文が入っていると書いてある。

   敦(タイ)は食器。稲等の穀物も盛る。「敦」は青銅器の時は"タイ"と読む。
また、書名の柱から、この器は呉大澂の所蔵であることが判る。
右図は器の蓋(ガイ・ふた)に鋳込まれた銘文。


   彜(イ)は祭器。酒を入れるのに使う。足のない形のもの、四本の足のある方彜など、さまざまである。
右図は内底に鋳込まれた銘文。

   尊(ソン)は酒器。以前この器は用途がハッキリしていなかったが、宋代になって盛酒器の一種であると断定された。形も様々で、もっと丈の短かいものもある。
右図は器と蓋とに鋳込まれた、犠牲の動物の形と亜字形。

   壷(コ)は盛酒、盛水の器として両用された。殆んどがこの形状をしており、釣り取ってが付いている。
右図は器の内側に鋳込まれた器銘の文字。「魚父癸」。

   卣(ユウ)は酒器。香酒用の盛酒器である。図にあるように、鉄瓶のような取ってが付いていることが多い。殆んど蓋が付いていて、この卣にもあったと思われる。
右図は、器と蓋とに鋳込まれた銘文。

   爵(シャク)は酒器。後世の酒杯に当たる。流し口、取ってなどが付いている。宮廷の祭礼では、神酒を受けるのに、身分によって順序、量の区別があった。「爵位」などはこのことに依っている。
右図は器の外側に鋳込まれた銘文。


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