雨のジョーチ君〈雨の日の十日 その2〉

2018年6月18日

梅雨寒の北鎌倉浄智寺

 

 

梅雨の 煙るような雨が 緑を濡らしています。

 

 

その竹叢(たかむら)の中にいるのは

 

 

寺職員ネコのジョーチ君では

 

 

  “ オマイリ カ  ニャン  ”

 傘さして 来ました。

 寒くないのかな ジョーチ君は

 

 

お寺で育つ猫には  観音さまのお守りがあるのかもしれないね。

 

 

鎌倉は紫陽花の季節になりました。

長いホームだけのような北鎌倉の小さな駅は

明月院を指して寄せ来る人波が 終日絶えません。

 

 

明月院に限らず、紫陽花はこのあたりに多い植物です。

 

 

浄智寺にも様々な紫陽花が綺麗です。

 

 

紫陽花は種類が豊富ですが、ガクアジサイの類の方が日本古来の品種といいます。

 

 

万葉集に詠まれていたのはこんな華奢な花だったのでしょう。

 

 

花の集まりは薄く小さく可憐で、野趣があります。

 

 

 

 

これも いかにも野の花らしい古体の紫陽花

 

 

 

 

花の集まりに厚みのある洋種の紫陽花もきれいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくは雨がちの鬱陶しい季節ですが、この世に雨も大事です。

ものごとが自然に、あるようにあることが幸せ

と、このごろは思うようになりました。

 “ソンナコト  ズットマエカラ  ワカッテイタヨ”

と、ジョーチ君は言うかもしれない。

 

 

 夏も なほ 心はつきぬ  あぢさゐの よひらの露に 月も澄みけり

          『夫木和歌集』夏3350 釈阿(藤原俊成)

 

紫陽花は和歌では「よひら(四枚)の花」とよく詠まれます。

 

四枚の花びらに見えるものは実は顎で、

その中央にある極めて小さい蕾のような形をした部分が花です。

中央に集まっている小さな粒と同じです。

 

この歌は、『古今和歌集』の秋の初めにあって印象的な歌

 

 木の間より漏り来る月の影見れば心づくしの秋は来にけり

 秋上  184 詠み人知らず

 

を本歌として詠まれたものでしょう。

月光の下、秋の情趣を至上とする「心づくしの秋」という表現を意識した上で、

夏もまた、紫陽花の花に置く露

(それは雨滴が花に残ったものかもしれない)に

射し照る澄んだ月の光が、

見る者の心の全てを使い尽くさせるばかりに美しい

と、季節の魅力を詠んでいます。

 

 

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