海を見ていた夕日君 〈早い春の十日 その1〉

2017年3月25日

 

新潟市

 

  晴れた日も、日本海をわたる風が まだ凜と冷たい海辺です。

  暮れてゆく空と水平線の間に平らに漂う雲は、この時期この地方に特有のもので、

  海面を丁寧に包むように低く広がっています。

  海の上を夕日まで続く金色の道が、その低い雲の層で途切れます。

 

  日が落ちかかると、あたりはぐんぐん気温が下がるのがわかります。

  寒はとうに明けましたが、集まっているスズメを見ると、まだ「寒雀」という言葉が浮かびます。

  ここ、新潟市は、海に並行した幾層もの浅い砂丘の重なりで陸地が出来ています。

 

 

  海に面した丘から夕日を見ていたネコさん。

“ ダレ?”

 

  くっきりとした白黒模様がきれいな若いにゃんこです。

  こちらに気付くと、じっとこちらを見ていて、好奇心が強そうです。

 

“  ドコカラ キタノ  アソボウヨ ”

 

“  ネエ  アソボウヨ ”

 

  御近所の飼い猫でしょうか、人なつこいネコさんです。

  足許に来て、夕方の気温でもうすっかり冷たくなった舗装道路にコロコロします。

 

     夕方だから、すぐ暗くなっちゃうから、 今日はお家に帰りましょう。

     またあした、会えたら遊ぼうね。

 

  日は、実は随分長くなって参りましたが、日頃の横浜の気温になれてしまうと、

  明るくても夕方は寒くて。

  留守居中のみやとひたちは、その温かな横浜の家でも、きっと陽の当たるソファの

  一番好い場所を争っているはずです。

 

     あしたは帰るからね。

 

椿

 

  晴れても、薄い雲からまだ冷気が降りて来るようです、北国の三月半ば。

  次の日、丘の上の夕日君とはついに会えないまま 横浜に戻りました。

 

          “ オカエリ ”          “ オカエリ ”

 

 

 

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