風に思い出す〈秋の初めの十日〉

2016年9月25日

 

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                                逗子から見える江ノ島

 

  横浜に引っ越して一年半が過ぎました。

 繁華な横浜駅を過ぎると途端に風景は鄙びて、高低差の激しい地勢に森や林が増え、

 谷の底のような、川の上のような、戸塚の駅に電車が滑り込むと、

 ああ帰って来た、と思う。この街に落ち着いてまいりました。

 

  街は便利で快適ですし、予想していた以上によいことも多くございました。

 鎌倉まで電車で10分、大磯まで30分足らず。仙人が日頃の散歩に通える近さです。

 夏の混み合う前に、七里ヶ浜や江ノ島の散歩にも片道30分で行って来られましたし。

 

  この転居はおおむね良かったと思える中で、一つ残念なことは、御近所に

 猫の知り合いができないことです。

 前の住まいでは実におおぜいの猫と付き合っていましたからね。

 

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                    舞岡公園の台湾リス

  

 みやとひたちは すっかり横浜の暮らしに慣れました。

 というより、始めから別になんでもなく新しい家で暮らしだしました。

 

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        “ ベツニ フツウダヨ ”    “ フツウダネ ”

 

 「犬は人につく」のに対して「猫は家につく」ということがあるそうで、

 引っ越しを心配してくれた知人も多かったのですが、

 我が家のふたりは、幸い、それほどの影響もなく、

 ここでもすぐに、のんきな家猫ライフの続きが始まりました。

     本ノ ソバガ イイ

     “ヒキツヅキ ベンキョウノ トモ ヤッテルヨ ”

 

 始めの頃は、夜寝る時だけ、寒くもないのに、ふたり私の布団に入って、

 みやも、同じお布団の中のひたちを邪魔にせず、左右から私にぴったり

 くっついて寝ていました。

 それもほんの数日で、間もなくふたりは、新居に自分らしい居場所を決めて

 落ち着いたようでした。

 

   オヤツ ノ チカク ガ オチツクネ

          “ オヤツノ チカクガ オチツクネ ”

 

     ゴハンは別でも、食卓の集まりには参加したいふたり。

     座面が高めの、折りたたみ椅子を使っています。

 

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                                       仙人草

 

 引っ越しの余波もすっかり収まり、 この坂だらけの、しかし緑も多く、御近所も親切で感じよく、

 全体としてたいへん快適な街に住み慣れてきて、また秋の風を感じると、ふと懐かしくなるのは、

 やはりお別れしてきた街のことです。

 

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 猫の森の近く、野原は間もなく秋桜の花盛りでしょう。

 秋桜に埋ずまって遠くからオーイオーイと呼んでいたボン子ちゃん。

 

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 里山に蔦や葛が色づき始め、足下にはたくさんの団栗。

 水の畔の彼岸花。小サギや翡翠、大きなアオサギも。

 

 思い出すと、清瀬の自然は夢のようにきれいでした。

 その森や散歩の小径を跳梁するおおぜいの猫たちは、本当に猫だったのか。

 耳のとがった、絹糸のようなひげのピンとした、妖精たちだったような気さえします。

 

 

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秋の初めの十日

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