梅林に棲む、その名は  〈春は名のみの十日 その4〉

2015年3月8日

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    梅が満開です。

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    「木の花は 濃きもうすきも紅梅」
      木に咲く花の中では 何がよいかといったら、
      濃いのも薄いのも 紅梅がすてき

   というのは、平安時代に そのセンスの良さで知られた清少納言の言葉
   (『枕草子』三十七段)でした。

   紅梅は中国からの伝来が、白梅よりかなり遅かったらしく、この当時でも
   まだ珍しい部類であったようです。

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   村上天皇の御代に、清涼殿の梅の木が枯れて、代わりの梅を探した時の逸話が、
  歴史物語の『大鏡』にあります。都中歩いても、ふさわしい木がなかなか見つからな
  かったという、それも紅梅でした。

   ようやく探し当てたのは西の京のひっそりしたあたりの庭でしたが、紅梅の木を
  勝手に掘り採って御所に移してから、その庭が、紀貫之の娘(紀内侍)の住まいで
  あったことがわかった、というお話です。

   紀氏は古代の名家ですが、藤原氏が権勢を独占しつつあった平安時代のこの頃には、
  すっかり片隅に追いやられていました。

   西の京というのは、大体において、華々しい貴族の住むところではありません。
  しかし、この庭には都中を探してもこれより優れたものがなかったほどの、すばらしい
  紅梅が咲き誇っていたのです。
   ささやかな、しかし手入れの行き届いた趣味の良い住まいに、文化的水準の高さが
  看て取れ、この時期の紀氏の矜持がしのばれます。

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    白い梅も満開
    お花見の客が絶えません

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       鵯(ヒヨドリ)が来ています。

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       雀もうれしそうにかくれんぼ。

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        目白も。

    梅に鶯 とは言いますが、鶯は恥ずかしがり屋でなかなか姿を見せません。

 

    そして、丘の上の梅の林近く

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    梅の林をすみかにしているというので誰かがつけた呼び名が

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           ウメちゃん!

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      ウメちゃんのお花が満開ね
                     “ マンカイダネ ”

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             “ ナンダカ ムズムズ タノシイ コノゴロ ”

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             “ テヘッ  ナンダカ ワカラナイケド ウレシイ ”

       春が来たからかな

               “ キット  ソウナンダネ ”

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             “ ジット シテラレナイ カンジ ”

     ウメちゃんはこの丘の上、梅の林に暮らして10年にはなるのでしょう。
     いつ会ってもご機嫌の好い、上品な猫です。

     たっぷりした、毛足の長い、きれいなコートを着ています。

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             “ ナンダカ ウレシイ ”

     この辺りの散歩が長い人のお話では、ウメちゃんのオカアサンは、
     紫色に見えるグレイの、素晴らしくきれいな猫だったそうです。

 

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             “ ハルナンダネ ”

 

     本当の春までもう少しのところまで来ました。

     ウメちゃんにはもうその気配がいっぱいに届いているようです。

     木にしがみつき、スリスリし、地面を転げ回り、ウニャウニャつぶやいて、
     うれしさが止まらないようです、梅林ウメ子ニャン。

 

 

 

 

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