2010年12月30日

第94回 歳末:季節の交替 嶺外守歳

第94回【目次】          

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  * 漢詩
  * みやとひたち




21聖路加.jpg                            塔と満月 22.12.21 東京築地・聖路加国際病院旧棟

   冬逐更籌尽
   春随斗柄回

    冬は更籌(かうちう)を逐(お)ひて尽き、
    春は斗柄(とへい)に随ひて回(めぐ)る。

    冬は水時計の目盛りが尽きるのを追って季節を終え、
    北斗七星の柄が回転するのにつれて新しい春がめぐって来る。

  大晦日の詩、唐の詩人李徳裕(りとくゆう)の五言絶句「嶺外守歳(れいがいしゅさい)」の冒頭の二句です。故郷を山を隔てて離れた地で年越しの夜を迎える詩です。去る時の側と到る時との両側からその交替の一瞬を歌っています。

   
28有明.jpg                                     有明の月 22.12.28 東京都清瀬市

  水時計の目盛りが尽きるとその日が終わるだけでなく、この日の場合はこの年も終わり、十二月が終わるので冬が終わるのです。「更」は夜の時間の単位。「更籌」は時計の夜の時間を計る目盛り、この時代は水時計です。「斗柄」は北斗七星が柄杓の形をしているところからその柄を構成する星々。北極星を中心にその柄杓の姿をした星座が回るのはそのまま時間の推移を意味します。夜が深くなり時が過ぎて日が変わると、季節も年も改まって新春がやって来ます。

   
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                                      山茶花 22.12.20 東京都清瀬市


  時の流れはいつと言って変わりはありませんが、時間の推移を素朴に暦に従って考えていた長い習慣のせいでしょう、年末はとりわけ過ぎゆく時間に感慨を催します。そのような気分になることが、何より年末らしい情趣とも言えましょう。かつて水時計の時代には、暦に定められている時間が尽きるのを、目に見えてなくなる水の分量で実感したにちがいありません。

   
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  平成19年(2007)1月から四年の間、三毛猫みやのリードで書物を開き、古今東西さまざまの詩林を散策する試みを続けてまいりましたが、今回をもちましてこの「みやと探す 作品に書きたい四季のことば」の連載は最終回とすることに致しました。開始当初まだ4ヶ月の仔猫だったみやもすっかり落ち着いた大人猫になりました。長くお付き合い下さって、みやと連載を応援して下さいました皆さまには厚く御礼を申し上げます。

   
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  新春1月からは趣を変え、今度は弟分のひたちを案内役に立てて漢文世界を中心に言葉探しの散歩を試みます。みやも和文の担当として今後も折々顔を出すことと存じます。みやを可愛がって下さいました皆さま、これからもどうぞ宜しく。またこれからは、頑張って漢文を読みますひたちも併せて御支援のほど、願い上げます。



  それでは、新年に新しい連載でまたお目にかかりましょう。ごきげんよう、そして、どうぞよいお年をお迎え下さい。


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