2010年7月23日

墨場必携:和歌 螢 夏虫

          
17コスモスビー.jpg                                           22.7.17 東京都清瀬市

この度は螢の歌の特集です。連載第13回にも螢を扱いました。そちらの例文も併せて御覧下さい。  

  桂のみこのほたるをとらへてといひ侍りければ、わらはのかざみの
  そでにつつみて

   つつめどもかくれぬものは夏虫の
   身よりあまれる思ひなりけり
             詠み人知らず『後撰和歌集』209
             『大和物語』四〇段 

   ゆく蛍雲のうへまでいぬべくは
   秋風ふくと雁につげ(告げ)こせ
             在原業平『後撰和歌集』252
             『伊勢物語』四十五段
   
   ものおもへば沢[さは]のほたるを
   わが身よりあくがれにけるたま(魂)かとぞみる
             和泉式部『後拾遺和歌集』1162

   ものおもへば沢[さは]のほたるも
   我が身よりあくがれ出づるたま(魂)かとぞみる
             和泉式部『後拾遺和歌集』1162

  ※上の二首は同じ歌。伝本によって違いが出ている。


          
18揚羽.jpg                                       黄揚羽 22.7.18 東京都清瀬市


   たちかへりあつめし窓にきてみれば
   むかしわすれずとふほたるかな
                 『続拾遺和歌集』556

 ※第五句「とふほたるかな」は「飛ぶほたる」「訪ふほたる」いずれにも読める。
  「飛ぶほたる」は定まった表現のように見えるが、第四句からのつながりを
  見ると「訪ふほたる」もむしろ自然であって決めがたい。 

   なつくさの繁みの葉末[はすゑ]暮るるより
   ひかりみだれてとぶほたるかな
                 『新後撰和歌集』239

   風わたるあしのすゑ葉におくつゆの
   たますらみえてとぶほたるかな
                 『新後撰和歌集』1285

   かきくらすさつきのさよのあまくもに
   かくれぬほしはほたるなりけり
                 『玉葉和歌集』399

   いけみづのいひ出でがたき思ひとや
   身をのみこがすほたるなるらむ
               『新続古今和歌集』304

          
10黒糸.jpg                                             22.7.10 東京都清瀬市


   夜をてらす草のほたるをあつめても
   みぬよのことをたづね知るかな
        源顕仲『堀河百首(長治二年[1105])』470
  ※読書を詠んだもの

         
みや記紀歌謡3.jpg
   ながれゆく川辺にすだくほたるをば
   いさご(砂)にまじるたま(玉・魂)かとぞみる
        隆源『堀河百首(長治二年[1105])』477

   風そよぐあさじまじりのかるかやに
   ほたるとびかふ夏のゆふぐれ
        藤原為忠『堀河百首(長治二年[1105])』541

   あまつほしかげみゆる夜はさはみづ(沢水)に
   すだくほたるを分きぞかねつる
        『久安百首(久安六年御百首[1150])』399

   なつ草のくさの葉がくれゆくほたる
   さはべの水に秋もとほからず
               後鳥羽院『正治初度百首』33


         
18尾長2.jpg       
18尾長.jpg                                           尾長 22.7.18 東京都清瀬市


 歌沢

  蝉と螢を秤[はかり]にかけて
  鳴いて別りよか焦れて退[の]きよか
  ああ われこれをいかんせん

             
おばさん2.jpg           "オ散歩ニ 来マシタ  暑ソウニ 見エナイ?"
   外猫さんは修行が出来てるからね
   




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