2009年11月 4日

墨場必携:漢文 聴蜀僧濬弾琴 李白


3susuki.jpg                                            21.11.3 東京都清瀬市

  聴蜀僧濬弾琴[蜀僧濬の琴を弾ずるを聴く]  李白

    蜀僧抱緑綺
    西下峨眉峰
    為我一揮手
    如聴萬壑松
    客心洗流水
    遺響入霜鐘
    不覚碧山暮
    秋雲暗幾重

     蜀僧[しよくそう]緑綺[りよくき]を抱き
     西の方峨眉の峰を下る
     我が為に一たび手を揮へば
     万壑[ばんがく]の松を聴くが如し
     客心[かくしん]流水に洗はれ
     遺響[いきやう]霜鐘[さうしよう]に入る
     覚えず碧山の暮れ
     秋雲暗きこと幾重[いくちよう]

   ※緑綺:漢の文人司馬相如の琴の銘。転じて琴の異名。

     蜀の僧が緑綺を抱き、
     西方の峨眉山の峰を下ってきた。
     私のためにひとたび琴をかき鳴らせば、
     何万という谷の松風を聴くようだ。
     旅を行く私の心は流れる水のような琴の音に洗われ、
     余韻は霜が降ると鳴り出すという鐘の中に吸い込まれてゆく。
     気がつけば、いつの間にか碧の山は暮れて、
     秋の雲は暗く幾重にも立ちこめている。


          
21紅葉1.jpg                                            21.10.21 東京都清瀬市


  弾琴[琴を弾す]   劉長卿

    洽洽七絃上
    静聴松風寒
    古調雖自愛
    今人多不弾
  
     洽洽[かふかふ]たり七絃[しちげん]の上
     静かに聴けば松風寒し
     古調[こてう]自[おのづか]ら愛すと雖[いへど]も
     今人[きんじん]は多く弾[だん]ぜず

    調べは七つの絃の上をさやさやと(洽洽)響き、
    静かに聴き入っていると、音色は松をわたる秋の風に和して
                        ひんやりと身にしみる。
    古い音調にはそれなりの良さがあるが、
    今の人はほとんどこの楽器を弾かなくなってしまった。


  秋夜宴山池[秋夜山池に宴す] 從四位上治部卿境部王 『懐風藻』

    對峰傾菊酒 
    臨水拍桐琴
    忘歸待明月 
    何憂夜漏深

     峰に対[むか]ひて菊酒を傾け、
     水に臨んで桐琴を拍つ。
     帰るを忘れて明月を待つ。
     何ぞ憂へんや夜の漏として深きを。

【文例】 和歌

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