2009年9月 1日

第65回 2009年8月30日:台風 野分 竹 納涼 初秋

第65回【目次】         
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    * 漢詩
    * 和歌
    * 散文
    * 訳詩・近現代詩
    * 唱歌・童謡
    * みやとひたち

20hagurotom2.jpg                                   ハグロトンボ 21.8.20 東京都清瀬市

1 2009年8月30日


   タイフーンの吹いている朝
   近所の店へ行って
   あの黄色い外国製の鉛筆を買った
   扇のように軽い鉛筆だ
   あのやわらかい木
   けずつた木屑を燃やすと
   バラモンのにおいがする
   門をとじて思うのだ
   明朝はもう秋だ
            「秋」西脇順三郎(「近代の寓話」所収)
      
       
20natsuhana.jpg                                          21.8.20 東京都清瀬市

  台風のような激しいものにやってこられると、季節の変わり目も露骨なほどくっきりします。
  この8月31日、関東以北は台風11号による雨風の時に強まる、寒く暗い一日でした。東京は平年の10月下旬の気温に下がり、我が家の猫たちもさすがにこの日は仰向け昼寝をしませんでした 。寒がって、クッションの下に頭を突っ込んでいるひたちのために、冬のタンスから急遽フリースまでとり出してきたのでした。これだけの低温は一時のものでしたが、台風明けの独特の深い青空に見おろされると、この日を境にはっきりと夏は遠退いたと感じます。

        
29水.jpg                                           21.8.29 東京都清瀬市

  季節は移るとはいえ自然の歩みにおおむねは従うもの。8月31日の風雨や異様な寒さは一日で去りましたが、8月30日の選挙結果による世情のもの騒がしさは、暗く寒かった31日の報道を台風をさしおいて席巻した上、その後も当分止みそうにありません。騒がしさというのは適当ではないかも知れません。考えてみれば、この選挙の結果は歴史的な大事件ですから。



  物事の当事者・あるいは責任者というのは損な役回りです。「多く働く者は多く失敗し、少し働く者は少し失敗し、全く働かない者は何も失敗しない」という趣旨の諺は世界各地にあるそうです。

  今回さんざんの罵詈雑言を浴びて選挙で負けた自由民主党は、政権当事者として、かの悲惨な太平洋戦争後の日本を驚くべき早いスピードで復興し、短い期間に経済的にはかなり豊かな国造りを果たし、戦後の60年以上をともかくも外国の植民地になることなく独立を保つことを得、さらにどこの国とも戦火を交える事態にならないよう舵取りをしきって今日に至った功績は大きいと思います。それだけの深謀も腕力もあったのです。

        
29ヒマワリ2.jpg                            清瀬ひまわりフェスティバル 21.8.29 東京都清瀬市

  もちろん立派なところばかりではありませんでした。ことに、近年目に見える問題がありすぎたのは事実です。同じ体制が長く続きすぎることそのものにも弊害は出てくるでしょう。だから、取り敢えず違う政党に国を任せてみよう、という判断で投票した人が多いのだ、というのがTVや新聞で見る選挙分析です。もっともなことではあります。"chenge"は世界的な流行語です。しかし、ただ変わればよいというものではありません。良い方に変わるのでなければ迷惑なだけです。

         
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  さて、「多く働く者は多く失敗し、少し働く者は少し失敗し、全く働かない者は何も失敗しない」という趣旨の諺は世界各地にあるそうですが、日本にすぐそれにあたるものが見つからないのは、もしかするとそこに日本人のメンタリティーがあります。当事者に厳しい、あるいは、責任者なら優れていて当然という意識が前提としてあるのかもしれません。

  実際に、批判は正義だという建前のマスコミは、自由民主党、特に保守的立場を鮮明にする総理大臣に対してはとかく失敗をあげつらい、攻撃するのが常でした。功績を伝えることはありません。報道機関が権力を讃えてはならない、という慎みが過ぎるのかも知れません。

  体勢が変わり、権力の位置が変わると、今度は民主党に対して同じように"正義の批判"が向けられるのでしょうか。そうであれば、また民主党も膨大な失敗の数を挙げられ、政権担当の上で自民党の苦労を繰り返すことになるのでしょう。またもし、"正義の批判"が民主党には向けられなかったとしたら、それはそれで恐るべきことです。マスコミにやはり偏向報道の意図があるという疑いが出てくるからです。広報活動は民主党の方が以前から上手でしたが、今後マスコミとの関係がどうなるか見物です。

       
29コスモス2.jpg                            今年一番に咲いたコスモス 21.8.29 東京都清瀬市

  この8月の選挙は、長い自由民主党政治の時代から政権を民主党に移した画期的な選挙になりました。大型台風が来ても、去ればさらに大きな天体の自然に沿う季節の変化とは違って、この世は法則もない変わり方で別の物になるのがおもしろくもあり、恐ろしいところです。民主党に期待されるだけの力量があるでしょうか。外交や教育問題に所謂(いわゆる)極左思想の影響を心配する向きもあります(人が財産の小さな国日本は、教育こそ長きにわたって政治が一番大切に守らなければならない領域です)。人数を減らし、野党になった自民党から余分な政治家が抜ければ、むしろ再生のチャンスがあります。結果として、この国が良く変わることができるかどうか、報道の姿勢も含めてみなで世の中観察をいたしましょう。今後の行方によって、日本史の教科書に2009年8月30日は日本の再興の日と書かれるか、あるいは終焉の始まりと書かれるかもしれないのです。
   

        
ガンバBayStars.jpg                      ひたちは"ガンバ BayStars"
   負けても試合のあとが爽やかなのが、大昔からこのチームの持ち味。
   ペナントレースの趨勢が決まってから"破竹の10連勝"などとやるのが得意です。
   それにしても、もうちょっと勝ってもよいのでは。


【文例】 漢詩・漢文

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