2009年5月18日

第58回 麦の秋:みどりのそよ風 小満 麦秋

第58回【目次】          
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    * 和歌
    * 訳詩・近現代詩  
    * 唱歌・童謡
    * みやとひたち

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1 麦秋至

   みどりのそよ風 いい日だね
   蝶ちょもひらひら 豆の花
   七色畑に 妹の
   つまみ菜つむ手が 可愛いな

   みどりのそよ風 いい日だね
   ぶらんこゆりましょ うたいましょ
   巣箱の丸窓 ねんね鳥
   ときどきおつむが のぞいてる

            清水かつら「みどりのそよ風」より1・2番

  木々の緑が鮮やかさを増してまいりました。5月21日は二十四節気でいう小満(しょうまん)。小満とは自然界のすべてのものが次第に満ちてくることを言います。生き物が成長し、万物に生気が満ち、果実は実り、草木は繁るという時期を意味するといいます。

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  ところで、この青葉の今の時期を呼ぶ名に「麦の秋」という言葉があることは、俳句の世界ではよく知られていることです。「麦秋(ばくしゅう)」「麦秋(むぎあき)」「麦の秋」は夏の季語になっています。

  二十四節気をさらに細かく分けた七十二候というものがあります。これも古代中国で考案された季節を表す方式で、二十四節気をさらに約5日ずつの三つに分けたものです。そこにはその期間の気象の動きや動植物のありさまを短文で表した説明が付いています。たとえば二十四節気の立春から次の雨水までの三つの候を見ると、一番初めの初侯は「東風解凍(東風が厚い氷を解かし始める)」、次の次候は「黄鶯睍睆(鶯が里で鳴き始める)」、末候が「魚上氷(割れた氷の間から魚が躍り出る)」などとあります。具体的で生き生きとした自然のありようが感じられて面白いでしょう。

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  さて、この小満の時期を見てみますと、最後の時期に当たる末候に「麦秋至」とあります。収穫のときを「秋」とする命名で、麦秋という言葉は古くからあったのです。青葉が盛んに繁り、稲の苗代に若い苗が育つこの時期、麦は早くも収穫の時期を迎えます。

     麦の秋あからあからと日はくれぬ
     一村は麦刈りのこす夕日哉(かな)

  いずれも子規の句です。子規の故郷愛媛県は裸麦の生産の盛んな地域で、生産高は日本一を誇ります。今年の刈り入れが始まったことが、つい最近のニュースに流れました。青空の下に金色の穂が輝く光景はTVで見ても豊かな景色でした。しかし、間もなくやって来る雨の季節を前に、麦の秋はそう長くありません。

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【文例】 和歌

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