2009年4月15日

墨場必携:漢文

11mid1.jpg                                         21.4. 11東京都清瀬市

  餞春    松本奎堂

    欲迹春帰處
    問春春不語
    流水與落花
    悠然背人去

  春の帰る處を迹[たづ]ねんと欲し、
  春に問ふも春語らず。
  流水と落花と、
  悠然として人に背きて去る。

  春はどこへ行ってしまうのかと、
  春に問うても春は答えない。
  流れる水と散る花とが、
  悠然として人を見捨てて行ってしまう。

  ※李白「山中問答」にある「落花流水杳然去 別有天地非人間」を引く。

8sakr3.jpg                                              21.4.8 東京都清瀬市

   芳野(よしの)     藤井竹外

    古陵松柏吼天飆
    山寺尋春春寂寥
    眉雪老僧時輟帚
    落花深處説南朝

  古陵[こりよう]の松柏天飆[てんぴよう]に吼え、
  山寺春を尋ねて春寂寥。
  眉雪[びせつ]の老僧時に帚くを輟[や]め、
  落花深き處南朝を説く。
   ※芳野:吉野
    古陵:後醍醐天皇陵(延元陵)
    飆:突風、つむじ風
  
  古い陵(みささぎ)のあたりの松柏は強風に吼えるような音を立てている。
  山寺に春を尋ねてみると、春はもう盛りを過ぎてひっそりしている。
  雪のような白い眉の老僧が箒を持つ手を止めて、
  花の散りしきる中に南朝の故事を物語ってくれたのであった。

11rakka2.jpg                                              21.4.11 東京都清瀬市

 
11rakka3.jpg                                       21.4.11 東京都清瀬市柳瀬川

    

【文例】 和歌

同じカテゴリの記事一覧