2009年2月 1日

墨場必携:和歌 「袖ひちて...」


1rou2.jpg                                  ロウバイ 21.2.1 東京都小金井市小金井公園
短歌

 ・袖ひちてむすびし水のこほれるを
  春立つけふ[今日]の風やとく[解く]らむ
                   紀貫之「古今和歌集」2

 ・立春天
  天の原春立つらしも
  朝がすみ浦安の名に立ちみちにけり
                   橘千蔭「うけらが花」巻一

 ・春風解氷
  薄氷[うすごほり]松吹く風にうちとけて
  千世の影見る春の池水
                   橘千蔭「うけらが花」巻一 

 ・春到氷釈
  さくら河汀[みぎは]の氷とけそめて
  春を寄せくる波の初花
                   橘千蔭「うけらが花」巻一

 ・立春霞
  風はやき山はけしきをたちかへて
  横川[よかは]の杉に霞たなびく

  我こそは面がはりすれ
  春がすみいつも生駒の山にたちけり
                   上田秋成「藤簍冊子」巻一 

 ・余寒風(よかんのかぜ)
  梅の花とく[疾く]にほはせて
  けふ[今日]はまた雪げにかへる風のさむけさ
                比田井小琴「小琴のちり」(昭和9年)
      
1hakub.jpg                                          21.2.1 東京都清瀬市

 ・真中[まんなか]の小さき黄色の杯[さかづき]に
  甘き香[か]もれる水仙の花
                 木下利玄
      
16sui.jpg                                     スイセン 21.1.16 東京都清瀬市

 長歌

 ・春たちけるあした 硯を洗ひて 筆を試みむとて

  おい[老い]が身は 世にしもうとし わびずみは 人もとひ来ず
  しかれども よの人なみに あたらしき 年をかさぬと
  ふせ庵[いほ]の 塵かき払ひ きならせる 衣[きぬ]ぬぎかへて
  朝日子の かげまちとりて 春の来る かたにむかへば
  ひと木たつ はひりの梅も いつしかと ひもときはじめ
  むら竹の をりかけ垣に うぐひすも はつ音もらして
  おのづから 心のどけし よしさやは とはれぬもよし
  老いぬとて 何なげかまし うれしくも ゆくらゆくらに
  しづかなる 世にながらへて むぐらにも さはらぬ春を
  またも迎へつ

  かへし歌(反歌)
  うれしくも春はむかへつ
  けふよりぞはな鶯をわがやどのとも
                      村田春海「琴後集」巻九
 ※長歌は反歌(かへし歌)とセットで作られている。
 
【文例】 唱歌・童謡

同じカテゴリの記事一覧