2009年2月15日

墨場必携:漢詩 梅花 墨梅 


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7日meji1.jpg                              サザンカの密を吸うメジロ 21.2.7   東京都清瀬市

・梅花   北宋 王安石

    牆角数枝梅
    凌寒独自開
    遙知不是雪
    為有暗香来
 
  牆角[しようかく]数枝の梅
    寒を凌ぎて独自に開く
    遙かに知る是れ雪ならざるを
    暗香[あんこう]の有りて来たるが為なり

  土塀のすみの梅の数本の枝が、
  寒さをものともせず、自分で花を咲かせた。
  遠くからでも、是が雪ではないとわかる。
  どこからともなく、かぐわしい香りが漂ってくるからだ。

  ※牆角:土塀の角、目立たない所。
      ひっそり咲く梅の品格を象徴するとして、この詩以来牆角は
      梅の縁語に用いられるようになった。

・二月五日携家観梅於月瀬村   江戸 梁川星巌
 (二月五日家(か)を携えて梅を月瀬村に観る)

    衝破春寒暁出城
    東風剪剪弄衣軽
    漫山匝水二十里
    尽日梅花香裏行

  春寒を衝破して暁に城を出づれば
  東風[とうふう]剪剪[せんせん]として衣を弄して軽し
  漫山[まんざん]匝水[さふすい]二十里
  尽日[じんじつ]梅花[ばいくわ]香裏[こうり]に行く
 
  春の寒さを破って暁に街を出ると、
  春風は身を切るように寒く、着物をひるがえす。
  梅の花は山一面に咲き拡がり、水辺をめぐること二十里、
  一日中、梅の香りの中を歩き続けた。

  ※家:妻女。星巌の遠縁から嫁した十五才年下の紅蘭。旧姓名張氏。
  ※月瀬村:奈良県

・墨梅   江戸 柴野栗山

    春風南客憶梅花
    忽向壁間写出斜
    記得幽林晴雪夜
    月移痩影上窓紗

  春風南客[なんかく]梅花を憶[おも]ひ
  忽[たちま]ち壁間[ひきかん]に向かって写出すること斜めなり
  記し得たり幽林[ゆうりん]晴雪[せいせつ]の夜
  月は痩影[そうえい]を移して窓紗[さうしや]に上らしむ

  春風の吹く頃となって、南から来た旅人である私は
               故郷の梅の花を思い起こし
  ふと部屋の壁に梅の枝の絵を描いてみた。
  今も心に残るのは、深い森の中で過ごしたある晴れた雪の夜、
  月の光は梅の枝の細い影を移らせて、
            窓覆の高さまで上らせてきたことであった。
  ※墨梅:墨で描いた梅の絵

     
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【文例】 和歌

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