2008年12月 1日

墨場必携:漢詩 初冬

・初冬月夜過子俶(初冬の月夜子俶[ししゆく]に過[よぎ]る)
           清 呉偉業
    月色破林巒
    貧家共一灘
    門開孤樹直
    影逼両人寒
    瀹茗誇陽羨
    論詩到建安
    亦知談笑久
    良夜睡応難

 月色[げつしよく]林巒[りんらん]を破り
 貧家一灘[いちだん]を共にす
 門開かれて孤樹[こじゆ]直く
 影逼[せまつ]て両人寒し
 茗[めい]を瀹[に]て陽羨[ようせん]を誇り
 詩を論じて建安に到る
 亦[ま]た知る談笑の久しきを
 良夜 睡[ねむ]り応[まさ]に難[かた]かるべし
 
 明るい月が山の上にさし出るころ、
 清貧の子俶の家に来てみると、早瀬のかたわらにあった。
 私を迎えて開かれた門の前には一本の樹がまっすぐに立っていて
 月影が枝越しにさしこみ、二人を寒々と照らす。
 茶を煮ては、陽羨の銘茶を味わい、
 詩を論じては、建安の風骨ある詩を良しとする。
 こうして談笑がいつまでも続くうえは
 このようなすばらしい夜、眠ることはできないだろう。
   薄月12-3.jpg                           20.12.3   東京都清瀬市 

  
里2.jpg                                        20.12.5   東京都清瀬市柳瀬川
    
鳥.jpg                                    20.12.5   東京都清瀬市柳瀬川



・山中月(山中の月)
           南宋 真山民
   我愛山中月
   烱然掛疎林
   為憐幽独人
   流光散衣襟
   我心本如月
   月亦如我心
   心月両相照
   清夜長相尋

 我は愛す 山中月
 烱然[けいぜん]として疎林[そりん]に掛かるを
 幽独[いうどく]の人を憐れむが為に
 流光 衣襟[いきん]に散ず
 我が心 本[もと]月の如く
 月も亦[ま]た我が心の如し
 心と月と両[ふた]つながら相[あひ]照らし
 清夜[せいや]長[とこし]へに相[あひ]尋[たづ]ぬ

 私は山中の月を愛す。
 葉の落ちた林の上を明るく照らしているのを。
 隠士を憐れむかのように、
 その光は襟の辺りを照らす。
 私の心はもとより月のようであり、
 月もまた私の心。
 心と月とがともに照らしあって、
 この清らかな夜、いつまでも賞[め]であうのだ。
   13nichi.jpg                                 20.11.13   東京都清瀬市
【文例】 和歌

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