2008年11月 1日

墨場必携:近現代詩 神無月 佐藤春夫...



・「神無月」より第1聯   佐藤春夫

  神無月 秋ふけにけり
  野の径[みち]に
  春の日の白き花 青[あを]き実となり
  風たちてうすれ日かげり
  蝶[てふ]舞はず
  卓に来て蛾[ひとりむし]重く翅[は]ばたき


・(題なし) 佐藤春夫

        中夜忽自起
        汲此百尺泉
        林木含白露
        星斗在青天   賈島
  つと起き出でて小夜ふけを
  この井戸[ゐど]ふかく清水[しみづ]くむ
  木立の樹々の露けさよ
  ひさかた星のきららかに
                論集「美の世界」所収

・秋思   佐藤春夫

        露濃圧架武道熟
        日嫩登場*椏香  *はノ木偏に「罷」字
        商量人生如意事
        及身強健得還郷   陸游
  露けきに架[たな]もたゆげに葡萄熟[う]れ
  ややにして日は和み来て*椏[ひあ]かをる
  人の世のあらまし事をおもんみれば
  ふるさとにわれ息災にかへり居る
                  「玉笛譜」所収

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                         20.10.31 ひよどり 東京都清瀬市








【文例】 唱歌・童謡

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