2008年11月 1日

墨場必携:漢詩 秋夜 露 雁 擣衣


・秋夜
  秋夜長
  夜長無睡天不明
  耿耿残燈背壁影
  蕭蕭暗雨打窓声
   秋の夜[よ]は長し。夜長くして睡[ねむ]ることなければ天も明[あ]けず、
   耿々[かうかう]たる残りの燈[ともしび]壁に背[そむ]ける影[かげ]、
   蕭々[せうせう]たる暗[よる]の雨は窓を打つ声[こ])あり。
     白居易「上陽白髪人」より 『和漢朗詠集』233
   ◎『白氏文集』所収の新楽府「上陽白髪人」の雑言句。

・秋夜
  遅遅鐘漏初長夜
  耿耿星河欲曙天
   遅々[ちち]たる鐘漏[しようろう] 初めて長き夜[よ]、
   耿々[かうかう]たる星河[せいか] 曙[あ]けなんと欲する天。
     白居易「長恨歌」より 『和漢朗詠集』234

・秋夜
  蔓草露深人定後
  終霄雲尽月明前
   蔓草[まんさう]露深し 人定[しづ]まりて後[のち]、
   終宵[よもすがら]雲尽[つ]きぬ 月[つき]の明らかなる前[まへ]。
     小野篁「秋夜詣祖廟詩」より 『和漢朗詠集』235

・露
  可憐九月初三夜
  露似真珠月似弓
   憐[あは]れむべし九月[きふげつ]初三[しよさん]の夜[よ]、
   露は真珠に似たり、月は弓に似たり。
     白居易「暮江吟」より『和漢朗詠集』338

・雁
  碧玉装筝斜立柱
  青苔色紙数行書
   碧玉[へきぎよく]の装へる筝[しやうのこと]は斜[ななめ]に立てたる柱[ことぢ]、
   青苔[せいたい]の色の紙には数行[すうかう]の書[しよ]
     菅原文時『和漢朗詠集』322
   ◎秋の青い空に雁が連なって渡るさまを詠んだもの。

・擣衣[たうい]
  八月九月正長夜
  千声万声無了時
   八月九月[はちげつきうげつ]正[まさ]に長き夜[よ]、
   千声万声[せんせいばんせい)]了[や]む時なし
     白居易「聞夜砧」より『和漢朗詠集』345

・擣衣[たうい] 
  北斗星前横旅雁
  南楼月下擣寒衣
   北斗[ほくと]の星の前[まへ]に旅雁[りよがん]横たはり、
   南楼[なんろう]の月の下[もと]には寒衣[かんい]を擣[う]つ。
     劉元叔「妾薄命」より『和漢朗詠集』346

【文例】和歌

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