2008年10月 1日

墨場必携:近現代詩 「曼珠沙華」北原白秋...

[近現代詩]

・「曼珠沙華」    北原白秋

  GONSHAN. GONSHAN. 何処へゆく
  赤い、御墓の曼珠沙華
  けふも手折りに 来たわいな。
  
  GONSHAN. GONSHAN. 何本か
  地には七本、血のやうに、
  血のやうに、
  ちやうど、 あの児の年の数。

  GONSHAN. GONSHAN. 気をつけな、
  ひとつ摘んでも、日は真昼、
  日は真昼、
  ひとつあとからまたひらく。

  GONSHAN. GONSHAN. 何故泣くろ。
  何時まで取つても、曼珠沙華、
  曼珠沙華、
  恐や、赤しや、まだ七つ。
               『思ひ出』所収

◎GONSHAN:柳川の方言で良家の令嬢のこと


             20.9.25 埼玉県日高市高麗本郷巾着田

・咲く心   八木重吉
   
  うれしきは
  こころ 咲きいづる日なり
  秋、山にむかひて うれひあれば
  わがこころ 花と咲くなり
                「秋の瞳」所収

・花と咲け

  鳴く蟲よ 花と咲け
  地におつる あきび
  この秋陽、花と咲け
  ああ さやかにも
  このこころ 咲けよ
  花と 咲けよ
                「秋の瞳」所収


                    20.9.20 東京都清瀬市

・秋のかなしみ
 
  わがこころ
  そこの そこより
  わらひたき
  あきの かなしみ
 
  あきくれば
  かなしみの
  みなも をかしく
  かくも なやまし
 
  みみと めと
  はなと くち
  いちめんに
  くすぐる あきのかなしみ
                「秋の瞳」所収

・秋の日の こころ

  花が 咲いた
  秋の日の
  こころのなかに 花がさいた
                「秋の瞳」所収


                   20.9.23 東京都清瀬市

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