2008年4月15日

墨場必携:近現代詩・訳詞 四月 ジョン・グリーンリーフ・ホイッティア...

[近現代詩・訳詞]

・四月  ジョン・グリーンリーフ・ホイッティア
     訳詩 小林愛雄
 
  春の真昼 風吹けど
  樹の枝に鳥も鳴かず


・春の朝   ロバアト・ブラウニング
       訳詩 上田敏『海潮音』
  時は春
  日は朝
  朝は七時
  片岡に露みちて
  揚雲雀なのりいで
  蝸牛枝に這ひ
  神、そらにしろしめす
  すべて世はこともなし


・すみれ   ドイツ民謡
       訳詩 小林愛雄
 
1 露にうるほふ 野辺のすみれよ
  涙ぬぐひて 今日もほほゑめ


  空の光に 栄[は]ゆるすみれよ
  命ある日の 今日をよろこべ。


・花     ジェイムズ・ウィリアム・エリオット
       訳詩 小林愛雄

    お庭に綺麗な
  花が咲いた
  すみれに白ばら
  ならんで咲いた


・音[ね]に啼[な]く鳥   佐藤春夫

        檻草結同心
        将以遺知音
        春愁正断絶
        春鳥復哀吟
             薛濤
  ま垣の草をゆひ結び
  なさけ知る人にしるべせむ
  春のうれひのきはまりて
  春の鳥こそ音にも啼け


コサギ 20.4.1 東京都清瀬市柳瀬川

・白鷺をうたひて

        沙頭一水禽
        鼓翼揚清音
        只待高風便
        非常雲漢心
             張文姫
  はまべにひとり白鷺の
  あだに打つ羽[はね]音[ね]もすずし
  高ゆく風をまてるらむ
  こころ雲ゐにあこがれて


コサギ 20.4.1 東京都清瀬市柳瀬川


・花のある杜[もり]  佐藤春夫

  花のある杜へ行つてきた
  誰も一緒には行かなかつた
  長い間ひとりでそこにゐた
  この上なし仕合わせなものだつた
  花のある杜では!

  地には
  草があり
  木には
  葉があり
  それから風は
  音を立てた
  とても清らかな
  楽しさで

  かくわたくしは
  仕合わせだった
  この上なしの仕合せだった
  花のある杜では!


20.3.31 東京都清瀬市柳瀬川堤

・少年の日  佐藤春夫

  野ゆき山ゆき海辺ゆき
  真ひるの丘べ花を敷き
  つぶら瞳の君ゆゑに
  うれひは青し空よりも

  影おほき林をたどり
  夢ふかきみ瞳を恋ひ
  あたたかき真昼の丘べ
  花を敷き、あはれ若き日


カタクリの花の中にキジバト 20.3.27東京都清瀬市

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