2008年2月 1日

墨場必携:訳詞・近現代詩 菩提樹...

[訳詞・近現代詩]

・菩提樹   訳詩 近藤朔風

 泉に沿ひて 繁る菩提樹
 慕ひゆきては うまし夢見つ
 幹には彫[ゑ]りぬ ゆかし言葉
 うれし悲しに 訪[と]ひしそのかげ
 
 今日[けふ]もよぎりぬ 暗き小夜中[さよなか]
 真闇[まやみ]に立ちて 眼[まなこ]とづれば
 枝はそよぎて 語るごとし
 「来[こ]よ いとし侶[とも] ここに幸[さち]あり」
 
 面[おも]をかすめて 吹く風寒く
 笠[かさ]は飛べども 棄[す]てて急ぎぬ
 
 はるか離[さか]りて 佇[たたず]まへば
 なほも聞ゆる「ここに幸あり」
 
 はるか離りて 佇まへば
 なほも聞こゆる「ここに幸あり」
        「ここに幸あり」
    『女声唱歌』明治42年(1909).11月

 


・浜千鳥  鹿島鳴秋

  青い月夜の 浜辺には
  親を探して 鳴く鳥が
  波の国から 生まれ出る
  濡れた翼[つばさ]の 銀の色

  夜鳴く鳥の 悲しさは
  親を訊ねて 海こえて
  月夜の国へ 消えてゆく
  銀の翼の 浜千鳥
          昭和7年(1932)

 

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