2008年1月15日

墨場必携:散文 「星は すばる。ひこぼし。...」


第26回 星の界(よ):冬の夜空・星座・天の海・月の船・星の林・オリオン・すばる


[散文]

・星は すばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからましかば、まいて。
     「枕草子」254段


・月朗らかに風涼しく、星の林のさやかなるを眺むれども、更にうき世の人の眺めに等しからず、御作者[=造物主、デウス:筆者註]の艶(みやび)かなるしるべとする也。
 『ぎやどべかどる』(慶長4 邦題『罪びとのみちびき』刊行)
 詩文の作者:ルイス・デ・グラナダ 訳者:不詳、宣教師あるいは通訳か


・星をひろった話(抜粋)
 ある晩黒い大きな家の影に キレイな光ったものが落ちていた むこうの街かどで青いガスの眼が一つ光っているだけだったので それをひろって ポケットに入れるなり走って帰った 電灯のそばへ行ってよく見ると それは空からおちて死んだ星であった
 『一千一秒物語』稲垣足穂
 ◎表記は新潮文庫版(昭和44年発行)の通り。


・星を食べた話
 ある晩露台に白ッぽいものが落ちていた 口へ入れると 冷たくてカルシュームみたいな味がした
 何だろうと考えていると だしぬけに街上へ突き落とされた とたん 口の中から星のようなものがとび出して 尾をひいて屋根のむこうへ見えなくなってしまった。
 自分が敷石の上に起きた時 黄いろい窓が月下にカラカラとあざ笑っていた
 『一千一秒物語』稲垣足穂
 ◎表記は新潮文庫版(昭和44年発行)の通り。
 

 

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