季節に映ることば
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名僧のことば・禅語ー中国編2

比田井和子

 

ロングセラー『名僧のことば・禅語1000』(伊藤文生編)から、5字から7字までのことばをご紹介します。

作品を書く時、お世話になった方へのお礼やお祝いに色紙をプレゼントするとき、「禅語」を紐解いてみてください。

書きたいことばがきっと見つかります。

なお、1字から4字までのことばは、「名僧のことば・禅語ー中国編」をご覧ください。

 

 

「不立文字(ふりゅうもんじ)」ということばがあります。
悟りの境地はことばであらわすことができない。だから以心伝心するしかない。
でもこれは、ことばを拒絶したり否定したりするのではなく、経典の一字一句にとらわれないという意味です。

文字を大切にし、ことばづかいの洗練につとめた結果、禅の世界には膨大な文献が蓄積されました。
心を伝えるために繰り返し磨かれ、鍛え上げられてきたことば。それが「禅語」です。




五字句

雨下地上濕 あめくだってチジョウうるおう
 雨が降れば地は湿る。

一字不著畫 イチジカクをつけず
 一本の矢で二羽のオオワシを射落とす。一石二鳥。

扶強不扶弱 キョウをたすけてジャクをたすけず
 強い者をたすけて弱い者をたすけない。強くなければ受けとめられないことを弱いものには伝えようがない。

銀椀裏盛雪 ギンナンリにゆきをもる
 銀の椀に雪を盛る。個別の相対性が消滅して痕跡を留めないことの喩え。

好事不如無 コウジはなきにしかず
 よい事は無い方がよい。うまい話は無い方がましだ。

巧匠不留蹤 コウショウはあとをとどめず
 名工は細工の跡を遺さない。

小魚吞大魚 ショウギョタイギョをのむ
 小さな魚が大きな魚を吞み込む。

舌上有龍泉 ゼツジョウにリョウセンあり
 舌に名剣「龍泉」が有る。言葉が命を奪うほどの鋭利さを帯びている。

大功不立賞 ダイコウはショウをたてず
 あまりに偉大な功績には褒賞など与えようがない。

日日是好日 ニチニチこれコウニチ
 毎日がめでたい。求道者としてあることの自覚のめでたさ。

萬里一條鐵 バンリイチジョウのテツ
 一万里の長さの一筋の鉄。連綿と続く堅固な伝統などの喩え。

平常心是道 ビョウジョウシン これ みち
 ふだんの当たりまえな心こそが道である。

本来無一物 ホンライムイチモツ
 一切は空無であり実体はない。

六字句

風従虎雲従龍 かぜはとらにしたがい、くもはリョウにしたがう
 風は虎を追って吹き、雲は龍を追って湧く。虎が嘯けば風が起こり、龍が吟ずれば雲が湧き出る。玄妙な現象のただならぬ風光。もとは『易』の乾卦文言伝。

急水上打毬子 キュウスイジョウにキュウスをタす
 急流上でポロの球を打つ。目にも止まらぬ素速い動作。意識の変転の速さの喩え。

強将下無弱兵 キョウショウカにジャクヘイなし
 強将の下に弱卒無し。

君子千里同風 クンシはセンリドウフウ
 君子は遠く隔たっていても意気が通じ合う。

好語不可説盡 コウゴはときつくすべからず
 うまい言葉は最後まで言い切ってはならない。言い尽くせるものではない。

紅爐上一點雪 コウロジョウイッテンのゆき
 真っ赤に燃える炉の上の一片の雪。瞬時に消滅して痕跡を留めぬもの。

三人證龜成鼈 サンニンキをショウしてベツとなす
 三人そろって証言すれば亀がスッポンにもなる。人の言葉に惑わされずに真実を見て取ることの難しさを言う。

嗔拳不打笑面 シンケンショウメンをタせず
 怒って振り上げた拳骨も笑顔を打つことはできない。

千聞不如一見 センモンイッケンにしかじ
 千聞は一見に如かず。

天下人不知價 テンカのひと、あたいをしらず
 天下にその価値を知る人はいない。

描不就畫不成 ビョウすれどもならず、ガすれどもならず
 えがきあげることができない。絵にも描けない美しさ。

禍不入慎家門 わざわいはシンカのモンにいらず
 慎み深い人の家に禍は訪れない

七字句

透網金鱗猶滯水 あみをとおるキンリンなおみずにとどこおる
 網を通り抜けられる金鱗の魚が水の中に留まっている。魚から脱皮して龍となる能力があるのに、現状に安住していては更なる向上の機をつかめない。

老将筋力不為能 おいてはキンリョクをもってノウとせず
 老いては筋力をひけらかさぬ。年寄りの冷や水は遠慮すべし。もとは『礼記』曲礼篇の「老者は筋力を以て礼を為さず」。

風吹不動天邊月 かぜふけどもドウぜずテンペンのつき
 風がいくら吹いても天の月は動かない。「風」は煩悩や欲望、「月」は真如や本来清浄心の喩え。

雲在青天水在瓶 くもはセイテンにありみずはヘイにあり
 雲は空に、水は瓶に。一切万物それぞれに所を得て、あるがままのありようだということ。

大唐打鼓新羅舞 ダイトウにクをうちシンラにまう
 大唐の都に居る者が太鼓を打ち鳴らすと、地の果てに居る者が舞い踊る。阿吽の呼吸で交わされる応酬の見事さ。

張公喫酒李公醉 チョウコウさけをキッすればリコウよう
 張さんが酒を飲み李さんが酔う。

信手拈来著著親 てにまかせてネンじきたればチャクチャクしたし
 手当たり次第に打つ一手一手がツボにはまる。囲碁の妙技。

百花春至為誰開 ヒャッカはるいたりて たがためにかひらく
 いろいろな花が春になると咲き出すのは誰に見せようというのだろう。せっかくの花を見てほしい。

     
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