2009年3月17日
板橋で終わる?
長いお正月休みで恐縮ですが、板橋に住むことになった理由の1つに、前回「通勤が楽」という条件、否、希望をあげたと思います。実際に住むことになって、都営三田線を使うようになってみると、確かに埼京線のような高密度な移動空間に身を晒すこともなく、なんとなく、巣鴨、春日、大手町と東京の真ん中のやや右よりを縦断していくことができます。やや左の縦断が有楽町線ですが、一度、朝に乗ったときはかなりの「きつめ」という印象でした。なぜ、三田線は・・・などと考えることもなく、まあ~東京もこんなもんだろうなと思って数ヶ月を過ごしました。
それがある日、もしかしてこれではと、押しつぶされるような状態にならない理由に思い当たりました。
その日の仕事帰り、
「焼酎は好きだよね」
「牛乳も好きだよね」
という先輩の言葉に、「意味が・・・?」と心のながでつぶやいていると、
「西巣鴨で降りて少し歩くと、お肉を食べながら、焼酎と牛乳が飲めるところがあるから行こう」とのこと。
「焼酎飲むのにわざわざ牛乳を飲まなくても、いや、牛乳を飲むのにわざわざ焼酎を飲まなくても」
とは思ったのですが、とにもかくにも経験と、せっかくのお誘いでもあり、30分後には駅を降り、明治通りをいそいそと歩いていました。
「ここだよ」
ということばによく見ると、「やきとん」の暖簾がかすかに揺れている、かなり昔からある様子の飲み屋さんでした。
カウンターに座り、
「ミルクセット」の注文に、運ばれてきたのは、2つのビールコップと牛乳瓶1本。コップの1つには焼酎がなみなみと注がれているのですが、もう1つは空。つまり空のコップに自分で焼酎と牛乳を、お好みの濃さにブレンドして飲むというものでした。
最初の一口は、おそるおそるといった感じでしたが、これがまた口当たりが想像以上によく、気が付くと体は微妙に揺れているのですが、左手に牛乳瓶を、右手に焼酎のコップを持ち、真ん中の空のコップへいざ注ごうという目線は妙に据わっているという状態だったようです。とにかく何杯のんだのか忘れるくらいに飲んで、1人、三田線に乗ったのでした。
そして気が付くと、車両には人の気配もなく、ホームの蛍光灯の明かりの先は闇が広がっていました。いつもの駅なら窓の外は壁なのに今日に限り壁がなくなるなんてと、ボーと思うと同時に反射的に椅子から立ち上がり、車両の外、ホームに立っていました。するとドアが閉まり、乗ってきた電車はすーっと闇の中に消えていきました。
「ここはどこ?」
「・・・西高島平? ああ~ここで電車が終わっているんだ。線路がないんだ。空しかないんだ。」それが、いつも乗り降りする駅よりも、初めて先へいったときのことでした。
現在、都内を走る地下鉄の多くは私鉄と接続していて、それこそうっかり寝過ごそうものなら、どこまで行ってしまうかわかりません。現に三田線も三田-西高島平だった路線が、三田から先へはどんどん延びて、神奈川まで行けるようになっています。
かたや西高島平は終点というべきか、始発というべきか、ぷっつりと消える高架になった線路。ここまでは来たけれど、もう線路がないからとにかく戻ろうといった感じの車両の後ろ姿。とにかく、三田線は板橋で終わっているんだ、だから空いているんだと思ったのでした。