2012年5月16日

墨場必携:漢詩 賦薔薇 源時綱

     
0504ユキヤナギ8227.jpg                                    ユキヤナギ24.5.4 東京都清瀬市


   賦薔薇[薔薇を賦(ふ)す]     源時綱

     薔薇一種當階綻
     不只色濃香也薫
     紅蘂風輕搖錦傘
     翠條露重嫋羅裙
     倩看新艶嬌宮月
     猶勝陳根託澗雲
     石竹金錢雖信美
     嘗論優劣更非群


0520薔薇0892.jpg                                         19.5.20 埼玉県所沢市

       薔薇(しやうび)一種(いつしゆ)
                階(きざはし)に当たりて綻(ほころ)ぶ
       只だ色の濃(こま)やかなるのみにあらず
                香も也(また)薫(にほ)ふ
       紅蘂(こうずい)風軽くして 錦傘(きんさん)揺らき
       翠条(すいでう)露重くして 羅裙(らくん)嫋(たわ)む
       倩(つらつら)新艶(しんえん)の
                宮月(きゆうげつ)に嬌(こ)ぶるを看るに
       猶(なほ)し陳根(ちんこん)の
                澗雲(かんうん)に託(よ)するに勝る
       石竹(せきちく)金銭(きんせん)信(まこと)に美しと雖も
       嘗(こころ)みに優劣(いうれつ)を論ずれば
                         更に群(むれ)に非ず

    
0520薔薇0889.jpg                                        19.5.20 埼玉県所沢市


     薔薇の花が階(きざはし)に花開こうとする
     色が深く美しいばかりでなく 香もまたすばらしい
     紅の薔薇の蘂(しべ)を吹く風は軽やかに
         錦の傘を開いたようにたっぷりした花はゆらゆら揺れる
     透き通るような翠の枝葉に露は重たく置いて
                  薄ものの裳のような花びらをたわませる
     新しいあでやかな薔薇が
         宮殿の上にかかる月を誘惑するような風情を見ると
     やはり谷間にかかる雲の中に古い根を寄せていたあの頃よりも
                             すぐれている
     石竹(からなでしこ)の花や金銭の花がほんとうに美しいとはいえ
     試みにも優劣を論じようとすれば
                    とうてい薔薇に並ぶ仲間ではない


      
0520薔薇0887.jpg                                         19.5.20 埼玉県所沢市
 




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