2012年5月11日

墨場必携:漢詩 首夏 四月 李賀


     
0505首夏8274.jpg                                           24.5.5 東京都清瀬市

  『河南府詩十二月楽辞、幷閏月』より「四月」    李賀

     暁涼暮涼樹如蓋
     千山濃緑生雲外
     依微香雨靑氛氳
     膩葉蟠花照曲門
     金塘閑水搖碧漪
     老景沈重無驚飛
     墮紅殘萼暗参差

   ※一首が奇数句で構成されている珍しい作。詩形としては七言古詩。
    陰暦四月は現行暦の五月初旬からの一ヶ月。
    陰暦の夏三箇月の第一月。初夏、孟夏。また、夏の始まりを首夏。


      
0428野道7687.jpg                                          24.4.28 東京都清瀬市
              
     暁に涼しく暮に涼しく 樹は蓋(がい)の如し
     千山(せんざん)の濃緑(のうりよく) 雲外(うんがい)に生ず
     依微(いび)たる香雨(かうう) 青(せい)氛氳(ふんうん)たり
     膩葉(じえふ)蟠花(ばんくわ) 曲門(きよくもん)を照らす
     金塘(きんとう)の閑水(かんすい) 碧漪(へきい)揺れ
     老景(らうけい)沈重(ちんじゆう)にして 驚飛(きようひ)する無く
     堕紅(だこう)残萼(ざんがく) 暗(あん)に参差(しんし)たり

    依微:ぼんやりしたさま。
    氛氳:気の盛んなさま。
    膩葉:「膩」はあぶら。脂肪。また肥え太る。
       膩葉はつややかに厚い葉。
    金塘:「金」は美しいことを言う冠詞。「塘」は堤、池。
    碧漪:「漪」はさざ波。波紋
    参差:互いに入り交じるさま。

      
0504雪柳8251.jpg                                     ユキヤナギ 24.5.4 東京都清瀬市

    夜明けは涼しく、暮れもまた涼しく、樹木は繁り覆って天蓋のようだ。
    四方の山々は緑を深くして、雲の彼方にそびえている。
    細かな香しい雨が来ると、辺りには盛んな緑の気配が立ちこめる。
    厚い緑の葉、びっしりと集まり咲く花の色は曲門に照り映える。
    美しい堤の閑(しず)かな水面に、碧の波紋が揺れ、
    樹木の成熟したたたずまいは重々しく、騒がしく散る花びらも無く、
    散り堕(お)ちた真紅の花と萼とが鬱蒼と暗い木の下に入り交じっている。
    
      
0504首夏8310.jpg                                           24.5.5 東京都清瀬市


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